世附川水ノ木沢

日程:2018/05/26

概要:西丹沢の世附川水ノ木沢を遡行。道志の森キャンプ場から歩き出して菰釣山に登り、南尾根を辿って大栂から下降し、入渓点。水ノ木沢を遡行して稜線の登山道に出てから、再び菰釣山の山頂を踏んで元来た道を下山。

山頂:菰釣山 1379m

同行:かっきー

山行寸描

▲ちょっと緊張する4m滝。取り付いてみればフットホールドが続いている。(2018/05/26撮影)
▲階段状の12m滝。気持ち良く登れる。(2018/05/26撮影)
▲美しいナメ滝。すたすた歩いて越える。(2018/05/26撮影)

◎本稿での地名の同定は主に『東京起点 沢登りルート120』(山と溪谷社 2010年)の記述を参照しています。

今年最初の沢登りは、かっきーと共にリハビリ遡行……と言っても、今回は私のリハビリです。2016年に谷川岳で負傷したかっきーのリハビリのために、昨年は鍋割山で鍋焼きうどん、大山川で乾燥系沢登り(なんだそりゃ)、裏同心ルンゼで癒し系アイスクライミングと順調にステップアップしてきた我々でしたが、今回は私の「ネパール呆け」を払拭するために、昨日の二子山マルチピッチに続いて丹沢での遡行に赴いた次第。

2018/05/26

△09:25 道志の森キャンプ場 → △10:30 菰釣山避難小屋 → △10:45-50 菰釣山 → △12:05-35 入渓点 → △15:40-45 稜線 → △15:55-16:05 菰釣山 → △16:20 菰釣山避難小屋 → △17:10 道志の森キャンプ場

今回の行き先は、かっきーのセレクトで世附川水系の水ノ木沢。甲相国境尾根の主峰となる菰釣山の西側を流れる沢です。下流からアプローチするなら南の丹沢湖近くの浅瀬ゲートから2時間の林道歩きとなりますが、遡行終了後のことも考えるとこれはとりたくない選択肢。そこで先人の記録を参考に、北の道志の森キャンプ場側から菰釣山に登り、登山道を離れて尾根を下るルートを採用しました。

通常であればキャンプ場の奥の林道を詰めてゲートまで楽をすることができるようですが、この日は道志の森キャンプ場でイベントがあるとかで、登山者の車は駐車場(500円也)に駐めるようにと係員に促されたために、30分ほどアプローチが長くなりました。それでも歩き出して1時間ほどで稜線に上がれたのですから、近いものです。

懐かしの菰釣山避難小屋。ここは昨年12月の西丹沢周回のときに泊まった小屋です。相変わらず清潔な小屋の中をチラ見してから、さらに登ること15分で菰釣山頂。小休止の後、登山道のない南側の尾根に入りました。

地図に標高1204mと表示されている大栂ピークを目指して尾根を下れば、途中部分的に枯れ笹がうるさいところがあるものの、おおむね見通しがよく歩きやすい尾根になっており、踏み跡やピンクテープもあって、迷うことはありません。明るいブナの林に癒されながら歩いているうちに、やがて大栂に到着しました。

大栂からは西へ水ノ木沢を目指して下っていきます。出だしは広葉樹と針葉樹の境目を淡々と下り、その後に尾根筋の勾配が緩やかなところを狙うラインどりとなるのですが、二度ほど尾根の本線を離れる箇所があり、踏み跡もあることはありますがGPSで現在位置を確認しながら下るのが安全です。また、下降の途中では派手な熊剥ぎを目にする場面もありました。

ドンピシャで目指していた入渓点に到着。ここは下界から上がってきた林道が折り返して山へと上がっていく箇所です。久しぶりに沢装備を身につけて入渓すると、少し遡行したところで先行していた釣り人に出会いました。自分も釣る気満々で来ているかっきーはあわてて自分の竿をリュックサックの中にしまうと、何食わぬ顔で釣り人を表敬訪問。かっきーによれば、こういうときは最大限の笑顔で次のように話し掛けるのが良いのだそうです。

  1. 釣れますか〜?
  2. 何が釣れますのん?
  3. 先に行ってよろしか?

くだんの釣り人はなかなかアタリがなくてイライラしていたそうですが、それでも我々に「いいですよ。ただ、なるべく水に入らないでください。申し訳ないけど」と言ってくれました。そんなわけで、しばらくは竿を出さず、釜っぽいところは極力避けながら遡行を続けました。

最初の3mの段差を右側の小さい階段状から登り、続いて出てきた釜を持つ3m滝は股下まで浸かって滝に接近。左側の壁を登りましたが、久しぶりのフェルトでのフリクションの感覚に慎重を要しました(つまり怖かった)。

深そうな釜を持つ4m滝は、この沢の中では最もテクニカルなところです。ぱっと見はどこを登るのか?という感じですが、右壁に取り付いてみると意外にフットホールドが続いており、手掛かりとなる岩もそこそこ安定しています。落ちても釜があるから大丈夫と覚悟を決め、慎重に足を置きながらトラバースしていけば解決可能。かっきーは途中で水流の近くに左足を遠く伸ばして抜けましたが、後続してみると、それよりもどんどん落ち口目指して高い方へ上がるのが安全のように思えました。

先ほどの滝を越えれば、もう竿を出してもいいでしょう!とかっきーのヤマメトライが始まりましたが、時間帯のせいもあるのかルアーに食いついてくれません。私の方は「どうせ(食べずに)リリースするんだから、釣れても釣れなくても関係ないね」とばかりに行動食タイムとしました。

しばらく竿を振った後、遡行再開。すぐに出てきた立派な12m滝は、遠目には立っているように見えますが、近づいてみれば階段状で大変フレンドリーです。

気分良くこの12m滝を越えると、小規模ながらきれいなナメが目立つようになり、歩くのがますます楽しくなってきます。

まだまだ豊富な水を落として美しい8×12mのナメ滝は右端から途中まで上がって、そこから左へ斜めに登ります。その登る方向を変えるあたりには、ピンクのツツジがまるで我々を待っていたかのような風情で咲いていました。

後は、ところどころの分岐で現在位置を確認しながら、正しく本流を辿るだけ。

……と思っていましたが、この膨らんだ感じの小滝は手ごたえがありました。流芯の突破もできそうでしたが、1段上がってみると意外に手掛かりがありません。ここで無理することもないかな、と草付っぽい左壁へ乗り移って上がったのですが、クラックに足を突っ込む箇所があり、そこでかっきーは足を若干痛めた模様。

それでも最後のチャンスと臨んだ浅い釜で毛バリを使い、ヤマメをゲットしたのはさすがです。記念撮影を終えたら、手早くリリース。この辺りで15時少し前ですから、少し先を急いだ方が良さそうです。

菰釣山に向かって等高線の間隔が最も広いところを目指すとすると、この二俣を見逃すわけにはいきません。水量は左の方が多いのですが、右が正解。目印のオレンジテープもありました。

水はすぐに伏流になり、苔むした涸滝を二つ越えたら、ひたすら谷筋を詰めていくことになります。

最後は明るく見通しの良い土の斜面を登って登山道に出ました。お疲れさまでした。

遡行を終えて登山道に出たところは菰釣山の西北にある小ピークの少し下で、菰釣山の山頂までは10分という場所でした。ぴったりあらかじめの計画通り……と言ってもGPSを使いながらですから、計画通りに歩けて当たり前ではあります。後は菰釣山頂で小休止をとったら、元来た道を下るだけでした。

この水ノ木沢は、途中にちょっとピリ辛な小滝を持ちながらも全体としては癒し渓で、大変よいところでした。源流系釣り師のかっきーにとっては釣りができる点も大事なポイントで、「日帰りではもったいない」とのこと。釣って、焼いて、食べての時間を得られるようにプランを見直して再度訪れたいということでしたが、私の方も、これまでノーマークだったこの世附川流域での初遡行で好印象を持ち、折々にこの周辺の沢を歩いてみたいと思いました。