山神峠〜同角尾根
Rec. 996
日程:2026/04/03
概要:玄倉から玄倉林道を進んで境隧道の先で御料林径路に入り、山神峠を訪問。続いて山神径路をモノレール広場まで辿り、仕事道を下って玄倉第二発電所の前に降りたら、玄倉川を渡って対岸の尾根に取り付き、向山ノ頭・裸山丸に登ったのち、同角尾根を末端まで下って、玄倉へ戻る。
◎PCやタブレットなど、より広角の画面で見ると、GPSログに基づく山行の軌跡がこの位置に表示されます。
◎GPSログのダウンロードは「ヤマレコ」から(要ログイン)。
山頂:---
同行:---
山行寸描
昨年の丹沢横断の2日目に玄倉林道を歩いたとき、境隧道を抜けてすぐ左にある御料林径路への入口と石崩隧道を抜けたところの玄倉川対岸にある向山ノ頭や裸山丸へ続く道の登り口を目撃して、いずれこれらをセットで山行プランを組
んでみようと思いついたのですが、ちょうどその頃にFacebookで参加している丹沢関係のグループへの投稿で「同角尾根のミツマタも見応えあり」という情報も得たので、1年間プランを温めてのこの時期に上記の2経路の探索と同角尾根のミツマタ鑑賞とを組み合わせて歩くことにしました。
2026/04/03
△08:10 玄倉 → △08:40 小川谷出合 → △09:10-25 境隧道 → △10:55-11:10 山神峠 → △11:40 モノレール広場 → △12:15 玄倉ダム → △14:00 向山ノ頭 → △14:20-30 裸山丸 → △15:30 女郎小屋乗越 → △16:15-20 大タギリ → △18:05-10 小川谷出合 → △18:35 玄倉
例によって新松田駅前で西丹沢ビジターセンターへ向かうバスを待っていると、ツバメの群れがさかんに飛んでは電線にとまっている光景に出会いました。そうか、もうツバメが来ているのか。ということはあいつら(ヒル)の季節が近いということか……と、ついいつものネガティブ思考が頭をもたげます。


それでも玄倉に着いて富士山と桜の取り合わせを眺めれば気分も高揚してきますが、玄倉第一発電所の電光掲示板には「ダム放流中 河川増水注意」と表示されていました。一昨日の午後から昨日の午前まで雨が降っていたので想定されていたことではありますが、これは困りました。同角尾根は5年前の「丹沢グルメ巡り」の際に下っているので、今回は反対に尾根の末端から登って裸山丸まで達してから南に下り、玄倉川を渡って山神峠セクションに入るつもりだったのですが、それでは裸山丸から玄倉川まで降りたところで増水に遭遇すると途方に暮れることになってしまいます。そこでプランを変更し、予定の逆コースとなる山神峠セクション→同角尾根セクションの順に歩くことにしました。これなら、山神峠セクションを終えて玄倉川に降り着いたところで、増水の様子を見てGo/No-Goを決められるからです。

見れば見るほど今日はいい天気。玄倉川の上流には、後で登ることになる(はずの)同角尾根が鎮座しています。


境隧道を通過したところで身繕いを行い、ここからが今回の山行の事実上の始まり。最初の目的地は山神峠です。

ちょっと悪いトラバースをこなして尾根の上に達し、反転して山神峠を目指すと、尾根道は先ほど通過した境隧道の上を通ります。左右に玄倉林道を見下ろしながらその上を歩くのは、なんだか不思議な感覚です。


最初のうちは雑木の中の階段(土留め)を登り続けますが、やがてきれいな植林の中の淡々とした登り道になってきました。枯葉が斜面を覆っているために踏み跡は不明瞭ですが、尾根通しに歩けばいいので道に迷う心配はありません。


P815の先で左斜面をトラバースするようになると、やがて道が荒れてトラロープが張られた場所も現れました。そこにはこの山域でおなじみの点検用巡視路につき通行により負傷された場合でも当局は責任を負いません
の掲示あり。まさに自己責任というやつです。ちなみに近年、この「自己責任」という言葉が濫用される傾向にありますが、法的根拠に基づく通行止め措置が講じられている道を歩くのは自己責任でもなんでもなく、ただの違反です。

……などとぶつくさ言っている場合ではなくなってきました。たとえばここは、角を回るところの狭い径路に山側の壁が張り出していてのけぞるような感じ。しかも左下は高さのある崖です。幸い、しっかりした木の根が出ていたのでその手助けを受けて通過しました。

ここもひどい。たわんだトラロープがぶら下がっていますが、通れるコースはそのはるか下をきわどく通過しており、しかも土質が脆いので緊張します。

やれやれ、やっと山神峠に到着しました。この荒れ具合では、この道は(波線ルートにしても)『山と高原地図』に掲載すべきではないと思います。


山神宮・水神宮に詣でてみると、なんと祠が新調されていました。ここに訪れるのはこれが3回目ですが、ぼろぼろの祠はそのうち崩壊するだろうと胸を痛めていたので、シンプルに三方を壁で囲い頭上を屋根で覆っただけの祠であってもこれはうれしいことです。


山神峠で小休止をとってから、山神径路を途中まで歩きます。出だしがいきなり崩落していますが、ここは上から巻いて簡単に通過可能です。


それにしても相変わらず荒れている……と言うより、荒れ具合に磨きがかかっている感じがします。初めてここを歩いたのは上述の初めて山神峠を訪れたとき=5年半前ですが、今から思えば下調べが不十分でヘルメットもかぶらず、無謀登山の一歩手前の状態でした。それでも歩き通せたのは、たぶん今ほどには道が荒れていなかったからです。

アッチ沢の枝沢の通過もヤバい。沢筋に落ちている木橋が往時を偲ばせますが、目の前の道を進んでも対岸には渡れないので、どうにかしてあの木橋のところまで降りなければなりません。

これは木橋のところから振り返り見た構図。鉄梯子やフィックスロープがありますが、梯子は壊れ、ロープは下まで届いておらず、しかも壁はほぼ垂直です。腕力に自信があればロープをつかんで降りることも可能そうではありましたが、それはこちら側から見て初めて言えることで、上からでは壁の状態やロープがどこまで届いているかを確認できません。かくして「山ではギャンブルはしない」がモットーの自分は、ためらうことなく自前のロープを出して懸垂下降でさっさと下りました。


少し進むとアッチ沢本流(?)を横断するところに各種標識あり。この山神径路はもともと仕事道だったものが2000年代の初めに登山道として整備され、しばらくは『山と高原地図』にも実線ルートとして紹介されていたので、その整備の際にこれらの標識が設けられたのだと思います(山神径路の整備と廃道化の歴史については〔こちら〕を参照してください)。これらの標識の先は道がおおむね安定し、すぐにモノレール広場に到着しました。山神径路は雨山橋に向かってさらに続きますが、今日はここで山神径路を離れて玄倉川に向かってまっすぐ下ります。


モノレール沿いに続く薄い踏み跡を辿ると送電線の下の切り開きが現れ、地形を読みながらこれを斜めに横断して左側の樹林帯に入って尾根筋を下ります。そして雨裂に架けられた橋を渡るとその先に玄倉川まで降りる道が現れ、玄倉第二発電所の姿が目に入りました。

下に見えている玄倉第二発電所は県営電気事業として1960年に運転を開始し、熊木ダムからの水で発電していましたが、2018年に運転を停止し、今年、ついに廃止が決定しました。ユーシンロッジも廃止・解体が決定していますから、長年にわたる玄倉川上流域の開発の歴史にとうとうピリオドが打たれたということになりそうです。


それはさておき目下の問題は玄倉ダムの放流ですが、見たところそれらしい様子はありません。これは行けるか?
石崩隧道の手前から見下ろした場所が玄倉川の渡渉ポイントですが、水位は低く、どうやら問題なさそうです。
と言うわけで下ったのはこの斜面(振り返った構図)。トンネルぎりぎりの狭いルンゼの中にコの字型の足場(通称「ホチキス」)があり、これを使って上の写真の斜めの水流(実はこれがアッチ沢)の上まで降りたら水流をまたいで、そこにあるフィックスロープも使いながら上流側へ斜めに下りました。


取り付いた対岸の尾根は、同角尾根上のピークのうち東沢乗越以南で最も高い裸山丸から南に伸びている尾根の末端で、初めのうちはロープや階段や鉄梯子が残されており、これらがよい目印になってくれました。


しかしそれも尾根の途中に立つ電柱までで、そこから先はとりたてて難しくはないものの斜度がきつく、スリップすればただではすまないという少々嫌らしい登りになってきます。予習段階ではこの尾根を下っている記録も目にしているのですが、実際に歩いてみて「逆コース(登り方向)にしてよかった」としみじみ思いました。


そうした登りもやがて斜度が緩み、白ザレの上の苔が美しい向山ノ頭を経て最後のひと頑張りで裸山丸に立つと、ブナに囲まれた明るい平地の穏やかさに癒されてここまでの苦労が報われた気がしました。


裸山丸から部分的にクライムダウンも交えて鞍部に下り、登り返した先がモチコシノ頭で、そこから先は過去に歩いたことのある区間です。ザレて狭い鞍部と明るく穏やかなピークを交互に連ねるのが同角尾根の地形の特徴で、途中にある大タギリと呼ばれるキレットがこの尾根の核心部ということになります。

大タギリの手前にある女郎小屋乗越もザレの斜面が嫌らしいところで、前回は様子がわからなかったので懸垂下降しましたが、今回はフィックスロープをバックアップにしてそろそろと下りました。


登り返してこの尾根の中で珍しく標識がある大タル山を越え、樹林の中の長いザレ斜面を慎重に下っていった先にフィックスロープが現れたら、そこから大タギリの底までは30mロープで3ピッチの懸垂下降になります。

これは下りの途中から降りてきた尾根を見上げた構図で、ちょうど15mごとにしっかりした木が懸垂下降の支点を提供してくれるのが助かります。ここを逆に登るのはフィックスロープ頼りの難儀なアルバイトになりそうで、だからこそ当初プランでのチャレンジ要素にしていたのですが、あいにく今回はそれが実現しませんでした。もし、あらためてここを登る山行を計画するなら、下りは東沢乗越から東沢を下る(その途中で鉱山跡を見物する)ことを考えるだろうと思います。

大タギリの反対側の壁は、遠目にはおそろしく立って見えますが、実際は出だしの3メートルほどを気合いで乗り越せば斜度が緩みます。ただし、途中で休めるフットホールドはごく限られているため、腕力が尽きないうちに登り切ることが肝要です。慎重を期するなら、2本のフィックスロープのうちの1本は途中に結び目を設けていないのでそこにフリクションヒッチをセットしてバックアップとすることが考えられますが、ロープの下端が固定されていないのでそれも厄介なことになりそう。タイブロックならまだましかもしれません。


白ザレの円頂に着いたらもう安心、ここより先に悪いところはありません。白い花を満開にさせたアセビの茂みをかきわけ、明るいブナ林の中を歩き、鹿柵に囲まれた芋ノ沢ノ頭(P840)は左から巻いて、どんどん高度を下げていきます。

P687の周辺に、噂のミツマタ群落がありました。さすがにミツマタヒルズやエルドラドほどの密度はありませんが、それでも斜面を覆うミツマタの広がりは目を楽しませ、あたりに甘い香りが漂っていました。


尾根の末端から右に折れて同角尾根を下り切り、沢を渡って車道に上がればミッション終了です。面白い山行でしたが、ちょっと時間がかかりすぎたようで、橋の上でバリエーション装備をリュックサックにしまい玄倉に向けて歩き出したときにはほぼ日没。玄倉に帰り着く頃にはすでに暗くなっており、そこから1時間弱の待ち時間を所在なく過ごした後に乗り込んだバスは、新松田行きの最終便でした。