塾長の山行記録

塾長の山行記録

私=juqchoの登山の記録集。基本は癒し系バリエーション、四季を通じて。

広河原沢左俣見晴らしルンゼ

日程:2018/01/16

概要:広河原沢左俣の見晴らしルンゼをワンデイで。

山頂:---

同行:セキネくん

山行寸描

▲本流右から2本目の滝。氷が草付にへばり付いているだけのように見えたものの、登ってみれば意外にしっかりしていた。(2018/01/16撮影)

2018/01/16

△09:50 舟山十字路 → △10:45 二俣 → △11:00-25 左俣F1手前 → △11:35 見晴らしルンゼ出合 → △12:00-16:20 見晴らしルンゼ三俣 → △16:35 見晴らしルンゼ出合 → △16:45-17:05 左俣F1手前 → △17:10 二俣 → △17:50 舟山十字路

1月7日に偵察して良さそうな氷瀑が何本もかかっていた見晴らしルンゼへ、この日はセキネくんとペアで入ってみることにしました。

三連休は車を駐める場所を探すのにも苦労するほどだったのに、この日の舟山十字路は平日とあってガラガラ。我々が出発の準備をしていると1人の猟師が犬を連れてやってきて、どこへ行くのか、泊まるのか、と聞いてきましたが、この日の行動中に出会った他人は結局このときの猟師だけでした。休日ともなればテント村ができる二俣ももちろん人影は皆無です。

F1の釜の手前まで進んでそこで登攀装備を身に着け、ストックとチェーンスパイクはデポすることにしました。やはり三連休最後の日の雪が残っていて、左俣の中は全体に前回来たときよりも白っぽい気がします。すぐに着いた見晴らしルンゼの入り口の滝も、すっかり雪に覆われて普通に歩いて登れる状態でした。

途中のナメ氷が露出しているところから左岸のやや上をトラバースして三俣に到着。舟山十字路からここまでのんびり来ても2時間余りです。なんとコンビニエントなことか。

改めてこの辺りの概念を図にしてみると、こんな感じでしょうか。(1)は左岸から合わさってくる支流で、本流はおそらく(2)ですが、見た目に最も立派なのは(3)。そして緩やかに斜上した先に(4)(5)の二つの滝が落ちていますが、どちらも短いようです。

まずは小手調べに、沢筋の一番奥に見えている(5)の滝を登ってみることにしました。そこまでの緩傾斜は雪がなくナメ氷が露出している状態なら慎重なアイゼン捌きが要求されるところでしょうが、この日は薄いながらも雪が覆っていてスリップの気遣いはなく、一応交互にロープを引いてはいるものの単なる歩きに終始しました。

(5)の滝は、セキネくんがリード。滝自体の高さは15mくらい?傾斜は引き続き緩い上に日当たりが良いために氷が柔らかく、アックスもアイゼンも簡単に決まります。ただし滝の上半分は、打ち込んだり蹴ったりすると段ボール箱を叩くようなボコボコという音がして、氷の下が空洞になっていることが窺えました。落ち口から先は傾斜のない沢筋が続くだけのようなので、直ちに懸垂下降で戻ります。

懸垂下降しながら(4)の滝を眺めてみたところ、こちらも短いながら部分的には立っていて面白そうでしたが、気温の高さのために滝の表面が溶けかけている様子も見えたので、今回はパスすることにしました。

というわけで、今回のメインディッシュとなる(2)と(3)の滝に転進です。(2)の滝は低いながら氷の厚みがあり、一方(3)の滝はきれいに立っていますが草付に氷がへばりついているようにも見えて微妙。

(2)の滝の手前も雪が少なければきれいなナメ滝となっている様子ですが、とりあえず角度が変わる位置までは確保なしでセキネくんに先行してもらい、そこから私のリードとしました。もっともこの滝も傾斜は穏やかに緩やかで、危険を感じる要素もなく10mほど登り、雪の詰まったゴルジュ状となりました。

落ち口の左(右岸)には懸垂下降用の残置スリングも見えていましたが、今回はこの見晴らしルンゼの全体像を把握することも目的としているので、ゴルジュをさらに奥へと進みました。突き当たりのチョックストーンの下の空洞で肩がらみでセキネくんを迎え、ついで上がってきたセキネくんが右から上部へ抜けてみると、先ほどのチョックストーンの左側から上がった位置にある沢筋がどうやら見晴らしルンゼの本流らしく、少し上流で二俣を作った上で御小屋尾根の稜線に向かって続いている様子が見渡せます。雪が深そうなのでこの沢筋を詰めることはせず、沢筋を横断して対岸の尾根に乗り上がり、これを乗っ越してみることにしました。

もくろみ通り、そこは(3)の滝の落ち口でした。先に降りたセキネくんが懸垂下降しながら氷の状態を観察したところ、落ち口近くは立っているものの、全体に氷の厚みは十分でスクリューも利きそうとのこと。ただし滝の下からでは確保条件に不安があったので、右岸の草付をトラバースしたところにある大きな灌木をビレイ地点とすることになりました。セキネくんは年長者である私を慮って「リードします?」と聞いてくれましたが、ここは若い者に花を持たせるのが道というもの。さっさとビレイ体制に入ってセキネくんを送り出しました。

草付を元来た方向へトラバースし、ちょうど滝の傾斜が変わるところから登攀スタート。落ち口まで20mくらいの長さを、氷の厚みを求めて左から右上へ、そして右から左上へというラインどりになります。まったく危なげなく登っていったセキネくんは、傾斜がきつくなる落ち口手前で慎重を期して短い間隔に2本のスクリューをねじ込んでから、よっこらしょと上へ抜けていきました。

ついで私も後続しましたが、やはりこの滝も日当たりの良さのおかげで氷は柔らかく、また傾斜も遠目に見たほどには立っておらず、不安を感じずに滝の長さを楽しむことができました。落ち口すぐ上には真新しい残置スリングが灌木に巻かれていましたから、最近誰かがこの滝を登ったものと思われますが、この日この滝は幸運にも我々の2人占めとなりました。

落ち口から先ほどのビレイ点まで1ピッチ、さらにそこから2ピッチの懸垂下降でリュックサックをデポしておいた三俣下部に戻りました。

楽しい登攀でしたが、15時には下り始めようと申し合わせてあったのに気が付けばもう16時です。懸垂下降に不要なギアはリュックサックにしまい、行動食をとってから下山開始。途中ロープ1本での2回の懸垂下降を交えて、デポしたストックとチェーンスパイクが待つ左俣F1の下まで下りました。

車に帰り着いたときにはすっかり暗くなっていましたが、それでも18時前ですから、見晴らしルンゼがいかにアプローチ条件に恵まれた場所であるかがわかるというものです。予報では翌日は八ヶ岳一帯に雪が降ることになっていますが、今週末にもう一度見晴らしルンゼに入ってみて、条件がよければ(3)の滝をもう一度、さらに時間があれば(1)の支流も登ってみようと考えながら舟山十字路を後にしました。