塾長の山行記録

塾長の山行記録

私=juqchoの登山の記録集。基本は癒し系バリエーション、四季を通じて。

鈴川大山川

日程:2017/11/26

概要:大山の表口に流れ落ちる大山川を遡行。二俣で方向を誤り左俣を遡行したため予定外の位置で登山道に出た後、山頂を往復して下山。

山頂:大山 1252m

同行:かっきー

山行寸描

▲威圧感のある二重滝。背後にギャラリーの視線を感じながら登る。(2017/11/26撮影)
▲テクニカルなハング滝。丁寧に探せばホールドは豊富。(2017/11/26撮影)

今年は自分もあまり沢登りをしていないし、山友かっきーも足首の動きが不安定になるタイプのバリエーションはずっと避けてきていたところなので、年の最後に駆け込みで1本行こうと誘いをかけてみました。その行き先は、相模の名峰・大山の正面に流れ落ちる大山川です。この沢の良いところ(?)は、水量が極めて少なくほとんど濡れずに遡行できるところ。アプローチの容易さももちろん魅力です。

……というわけで飛び石連休の最後の一日、2人とも珍しくラバーソールの沢靴をリュックサックに入れて、一路大山を目指しました。

2017/11/26

△09:15 駐車場 → △09:40 大山ケーブル駅 → △10:15-50 二重滝 → △11:45 二俣 → △12:35-45 登山道(1080m地点) → △13:00-20 大山 → △14:25 阿夫利神社下社 → △15:00 大山ケーブル駅 → △15:25 駐車場

紅葉目当ての観光客で大賑わいの大山界隈。けっこう手前に車を置いて、人混みに流されるようにして我々も参道を上がります。

ケーブル駅を過ぎればぐっと人の数は減り、正統派の登山者たちの世界となりました。登りは男坂をとりましたが、急傾斜を一本調子に登っていくこの道は、確かに男性的と言えるかもしれません。

男坂と女坂が再び出会った少し先で右手へ山腹をトラバースする道に入り、しばしの歩きで着いたのが二重社。ここが遡行の起点です。

大山川の上にかかっている橋から二重滝を眺めてみると、左右の壁とも意外に立っていて難しそう。こんなはずでは……と思っても後の祭りで、覚悟を決めて左岸に立つ二重社の脇で身支度を調えました。

本来は悪場に強いかっきーも今日はリハビリモードなので、まずは私がリード。かつては禊が行われていたという滝の直登は避け、左壁の下に立って見上げてみると、それほど傾斜が強くありません。なんだ、これならロープなしでも行けるぜ!と2人でうそぶき合いましたが、実際にはそこまで簡単でもありません。背後の橋の上に鈴なりになったギャラリーの視線を感じながら、まず1段上がると最初の残置ピンにランナーがとれて、そこから次の1段を上がるところがこの滝のポイント。斜上するラインはバランスが悪く、足も外傾した岩の上にスメアで耐えて体勢を組み立て直さなければ進めません。つまりはちょっとしたムーブが必要なのですが、ここを手順足順を尽くして抜ければ、後は易しい凹角状。岩が脆くてカムが利かないのには少々焦りましたが、探せば落ち葉の下に残置ピンが適度な間隔で残されており、順調にロープを伸ばすことができました。

二重滝の2段目は左端から何ということもなく登れて、そこからしばらくはちょっとした小滝を適当に登ることになります。

この日2番目のハイライトとなるのはハング滝5mで、右壁にかかる流木を使って登るパーティーもいるようですが、どう見ても正面突破の方が安全そうです。ここも私のリードで、まずはハングの下に立って右手をクラックにジャミング、左手をアンダークリングで固定してから右上へ乗り上がると、ハングの上の斜面に手掛かり足掛かりが豊富です。ご丁寧に残置ピンからお助けスリングも垂れていて、かっきーはこれを使って後続してきました。

その後の小滝の連続はこれといった問題もなく、そして三つ目のポイントとなるつるっとした2条8m滝へ。

滝の形は確かに「2条」のようですが、すっかり水が涸れていて、この日我々が履いているラバーソールの沢靴のフリクションなら問題なく登ることができました。この滝を越えて滝の上のテラスに出ると、その左上に立派な涸滝10mが待ち構えていました。高度感はあるものの見るからに階段状のこの滝なら、かっきーのリード復帰戦に最適です。

かっきー復活篇。ちょっとぎこちないところもなきにしもあらずですが、危なげなく落ち口へ上がって行きました。怪我から立ち直ってここまで来るのに丸々1年と1カ月の忍耐が必要だったのだな……と感無量(←産まれたての仔鹿が立ち上がるのを見守る母鹿の心境?ちょっと違うか)。ところが、その直後に私が失敗をしてしまいました。

10m滝のすぐ先で沢は二俣になっており、そこにあったテープ印は右俣を行けと示しているのに、私がトポをどう読み誤ったのか左俣が本流だと勘違いしてしまい、かっきーをそちらへ強引に誘い込みました。

しかし、こちらは最初こそそれなりの小滝を連ねていたものの、徐々に沢形が浅くなってガレのルンゼとなり、そしてすぐ左上には登山者の姿を見るようにもなってしまいました。

こうなったら仕方ない、適当なところで左手の斜面を這い上がり、登山道に出ました。ひっきりなしに通過する登山者たちの何人かは、我々の風態を見て何かの工事関係者だと勘違いしたようですが、構わずシューズ以外の装備を解いてリュックサックにしまうと、何食わぬ顔で我々も登山者の列に加わりました。

ヤビツ峠から上がって来る道を合わせてさらに登ることしばし、大山山頂に到着です。

大山は尾根を通じて丹沢とつながっているとはいえ、独立峰の気概をもって独自の価値を誇示する山です。その山頂からの海側の眺めも、この通り見事。山頂は登山客で大賑わいでしたが、よく見ると数人は腰のハーネスも眩しい沢登ラールックでした。どこの沢を登ってきたのかな?

何はともあれ、まずは奥社に鎮座する大雷神に無事登頂の御礼をしてから、持参した缶チューハイでプシュッと乾杯。ここも阿夫利神社本社の境内なのですが、かっきーの沢復帰祝いと私の草鞋納めなので、どうかご容赦下さい。

さらにこの山には小ぶりながらも御中道があり、これを巡ってみました。さすがに富士山の御中道甲斐駒ヶ岳の御中道と比べてはかわいそうですが、途中には富士山のビューポイントもあったりして悪くありません。

下りは元来た尾根道を辿り、分岐点から今度は女坂を選びました。これのどこが女坂?と思うほどの急下降が続きましたが、こちらは男坂と違って宗教的なモニュメントが点在していて飽きさせません。

そして下社周辺は紅葉の真っ盛りでした。これは素晴らしい!

さらに下ったところにある大山寺周辺の紅葉も、その鮮やかな赤味が尋常ではありません。そして元は二重滝にあったという八大堂を横目に見てから、我々は女坂をケーブル駅へと下り続けました。

二俣で方向を誤ったためにトポ通りの遡行にはなりませんでしたが、前半の主だった滝をすべてまともに登ることができたので、満足度としては十分です。何より大山の山頂からの展望と中腹の紅葉を満喫できて、山旅としてはゴージャスそのもの。アプローチも容易なこの大山川は、かっこうのトレーニングの場としていずれ再訪問してもよいと思わせるものがありました。ただし、次に来るときはちゃんと右俣を遡行し、そして下山後は(今回時間の都合で手を出せなかった)豆腐料理や猪鍋をいただくつもりです。

再訪問を願っていましたが、2019年から「二重滝は御神体につき登攀禁止」とされたそうです。残念ですが、御神体とあっては尊重するしかありません。豆腐料理や猪鍋は、のんびり観光の一環としていただくことにします。