権現沢右俣正面ルンゼ / 左俣展望台の滝
日程:2013/12/22-23
概要:上ノ権現沢、天狗沢左俣などのロング遡行をもくろんだものの、直前に降った雪によるラッセルの深さに負け、ルートミスも重なって権現沢右俣正面ルンゼと同左俣展望台の滝の2本に終わる。
山頂:---
同行:かっきー
山行寸描
昨年のこの時期にも足を運んだ八ヶ岳東面でのアイスクライミング。再びかっきーと共に出合小屋に向かいましたが、やっぱり今年も直前の降雪に泣かされることになりました。
2013/12/22
△04:30 美しの森 → △07:15-45 出合小屋 → △11:00-13:20 権現沢右俣正面ルンゼ → △14:15 出合小屋
かっきーの仕事の関係で土曜日の15時に蕨駅前で合流し、そこからかっきー号で中央自動車道を経て甲州に入って「道の駅 南きよさと」で数時間の仮眠。3時に起床し、美しの森へ移動してまだ真っ暗な林道を歩き出しました。
八ヶ岳一帯は数日前に雪が降っただけでなく土曜日午後にもまとまった降雪があった模様で、林道はふかふかの新雪に覆われていました。このアプローチは距離も大したことはなく傾斜らしい傾斜もないので体力的には楽なはずなのですが、いつも冬季登攀用の重荷を担いで歩いているせいかどうも苦手です。夜勤明けのかっきーもさすがに足取りが重い感じ。
出合小屋の前でこの雪のために下山しようとしている男女ペアと会話を交わしましたが、沢筋をよほど詰めなければ雪崩はさほど心配いらないということをかっきーが説明すると、2人は小屋に戻って登攀を継続することになりました。実はここでの会話が、翌日の我々の行程に大きく影響することになるのですから、山というのは何がどうつながるかわかりません。
ともあれ小屋の中でデポ品と登攀具とを仕分けし、軽くなったリュックサックを担いで権現沢に向かうことにしました。先ほどの男女ペアも一緒に出発してラッセル跡を辿りましたが、雪をかき分けてあるのは権現沢の二俣まで。昨年、展望台の滝に向かおうとしたものの雪の深さにその後の行程を断念した地点です。
その展望台の滝を見に(できれば登りに)行くというペアは左俣へ、我々は右俣へ向かいます。お互いのラッセル祭りに幸多かれと祈り合いながら、彼らとはここで別れました。
しかし……この毎回の怒濤のラッセルは、何とかならないものか。
途中にちょっとした氷瀑が出ていて、ここはロープを出すことなく各自フリーで突破。そこから先もラッセルの深さは変わらず、はるか遠くに権現岳バットレスを見上げながら腰〜胸のラッセルを続けましたが、右岸にルンゼが入っている箇所を越えて少し登ったところで「この先にラッセルを続けたとして、何かいいことがあると思う?」「いやー、これでは終日ラッセルだけで終わりでしょう」という会話を交わすことになりました。あかん、撤退や。それなら、先ほどの右岸のルンゼの奥に見えていた氷瀑を帰りがけの駄賃に登ってお茶を濁すことにしよう。それにしても、あのルンゼは何だ?
ここでようやく白状しますが、我々は上ノ権現沢に入るつもりで、誤って権現沢右俣に入っていたのでした。上ノ権現沢に入るためにはツルネ東稜へ向かう標識に従って右に進まなければならなかったのですが、トポを確認することもなくラッセル跡に引っ張り込まれて権現沢に向かっていたというわけです。したがって、この「右岸のルンゼ」が「権現沢右俣正面ルンゼ」であることを把握したのは、この滝の登攀を終えた後でした。
ルンゼの奥にある顕著な滝は、高さ数m。しっかりしていると見えたものの、近づいてみると意外に氷の状態が悪く、あまり快適ではありません。それでもかっきーは果敢に左端の最も長いラインを狙いましたが、スクリューを2本打ったところでそこから直登を避け、右にトラバースしようとしたところでフォールしてしまいました。幸いスクリューがしっかり利いていたので墜落距離は大したことはありませんでしたが、シーズン最初の滝としてはちょっとしょっぱい感じです。しばらくぶら下がって休憩の後、再び登り始めたかっきーは今度は見事に滝の中央を突破。その後、滝の上へロープが伸びていきましたが、ラッセルを継続しさらに雪に埋もれた小さな氷瀑を越えたところまで上がって木に支点をとることになり、50mロープがほぼいっぱいになりました。
後続の私もスクリューを打たれた位置まではかっきーと同じラインを辿りましたが、そこから右へのトラバースは落ちて振られるリスクを考えるとかなり怖い。よってロープを左へ回してフォールラインに素直に続く方向に位置を正してから、氷の悪さに目をつぶって直登しました。結果的にはこの選択は正解で、思い切って滝の左端を狙うと意外にしっかりしたアックスの利きを得ることができ、どうにか無事に滝の上に乗り上ることができました。
ビレイポイントから左岸の小尾根へプチラッセルし、尾根の先端に近いところから権現沢左俣本流側へ懸垂下降。50mロープ1本でぎりぎりで雪の斜面に下り着くことができました。ああ、疲れた。
出合小屋に戻る前にツルネ東稜へ向かうラッセル跡を辿ってみましたが、踏み跡は途中の碑文がある岩で止まっていました。ということは、雪稜ルートを登って出合小屋へ戻ってきたパーティーはまだ帰ってきていないということになります。朝方の話では、旭岳東稜と天狗尾根に向かったパーティーがいたとのことでしたが、大丈夫なんでしょうか。
小屋に戻ると、ちょうどガイドが率いる4人パーティーが到着したところでした。その後、展望台の滝まで往復してきた男女ペアが帰還し、さらに旭岳東稜へ向かっていた山形の3人パーティーが恐るべき脚力を発揮して16時頃に戻ってきました。
そこそこに賑やかになった小屋の中での夕食は、かっきー自慢のつみれ鍋です。一味を入れ過ぎたとかでえらくスパイシーな味付けになっていましたが、身体の芯から温まる鍋は冬山の必須アイテムです。
すっかりお腹がいっぱいになり、日本酒も2合飲んで満ち足りた気分になった私は、18時頃にはもうシュラフの中にもぐり込んでいました。一方、ありったけの酒を飲んでいい気分になったかっきーは山形トリオと意気投合し(意気投合させ?)、狩猟の話などで大いに盛り上がっていましたが、それでも20時頃には小屋全体が眠りに包まれたようでした。
2013/12/23
△07:15 出合小屋 → △08:50-10:50 権現沢左俣展望台の滝 → △11:35-12:20 出合小屋 → △14:00 美しの森
5時すぎに起床。この日は、昨日の男女ペアがつけてくれたラッセル跡に期待して、権現沢左俣の途中にある展望台の滝を登ってから下山する予定です。
天気図によればこの日は西高東低ながら等圧線の間隔が広く、穏やかな一日が約束されています。純白の稜線を見上げながら歩みを進め、二俣からは左俣へ入りました。
権現岳東稜へ登るときの目印となる顕著なゴルジュを抜けて、その先の谷筋を踏み抜きに注意しながらラッセル跡通りに高度を上げ(男女ペアのお二人、ラッセルありがとうございました!)、右に大きく曲がった少し先の右岸に落ちている氷の滝が、目指す展望台の滝でした。
この滝は3段ということになっていますが、下段は雪に埋もれた段差程度で登攀の対象とはならず、中段がいい感じに凍っていました。リードするか?とかっきーに水を向けられましたが、ここはまだ要修行。謹んで辞退し、ビレイに回りました。
出だしの2mは立っているものの、そこから先は適度に足を置ける場所があって、かっきーは慎重にスクリューをセットしながらも余裕のクライミングで上へ抜けていきました。後続の私も、スクリューを抜く際の腕のパンプに苦悶の表情を浮かべながら何とか後続。これは私にとってはリードできるかどうかぎりぎりの難度だったような気がします。
中段の上に登って改めて上段の滝を見上げてみるとつららが集合して細い下部が下に届いている状態で、我々にはとても登れる様子ではありません。潔く中段だけにして下降することにし、右岸の立ち木に残されていた残置スリングを使って懸垂下降して元の位置へぴったり着陸です。
かつて天狗尾根の最上部で遭難死した山仲間たかやんの追悼を果たしたかったかっきーは、その名の通り素晴らしい展望を提供してくれるこの展望台の滝の基部から正面に見える赤岳天狗尾根に向かって、昨年に引き続き今年も見舞に行けなかったことを詫びる挨拶を送っていました。合掌。
元来た道を下り、相変わらず純白に輝く稜線の山々の眺めや雪面に残る動物達の足跡に癒されながら出合小屋へ戻りました。
山形トリオとガイドパーティーはそれぞれ天狗尾根を目指して登り続けているところのはずで、小屋にはテントやマットが残置されていましたが、我々は自分たちの地所を片付け、箒をかけてから戸締まりをして小屋を後にしました。
下山してから美しの森からさほど離れていない「パノラマの湯」で身体を温め、甲府のとんかつ屋「美味小家」でおいしいとんかつをいただきました。
帰りの道中、かっきー号の車内では例によってありとあらゆる曲が流れました。前回の山行時に聞かされてすっかりお気に入りになった石川さゆり「あいあい傘」がかからなかったのは残念でしたが、次の2曲が新たに私の心の中のお気に入りリストに加わりました。
- Billy Joel「The Entertainer」シンセサイザーのフレーズが軽快でありながら郷愁を誘ってすてき。
- ハニーナイツ「宇宙猿人ゴリなのだ」♫宇宙〜猿人、ゴ〜リな〜の〜だ〜。