八海山

日程:2013/09/28-29

概要:山口から屏風道を登って千本檜小屋に達し、併設されている避難小屋に宿泊。翌日、八ツ峰を越えて入道岳に達し、五竜岳から阿寺山を経て下山。

山頂:入道岳 1778m

同行:ゴディーさん

山行寸描

▲初日の行程=山口から千本檜小屋まで。(2013/09/28撮影)
▲2日目の行程=千本檜小屋から下山まで。(2013/09/29撮影)

一昨年に万太郎本谷をご一緒したゴディーさんと、今回は越後の山・八海山へ向かいます。当初の予定では金曜日の夜に小出まで入っておいて、土曜日の朝一番のバスで枝折峠に向かい、そこから越後駒ヶ岳を経て中の岳に泊。翌日に八海山まで縦走を継続して越後三山縦走を達成するというのがプランの骨格だったのですが、調べてみると小出〜枝折峠間のバスの運行は「日・祝日のみ」。これではダメだと計画を変更して、八海山から入ることにしたのでした。

2013/09/28

△08:55 山口 → △09:25 二合目登山口 → △13:20 千本檜小屋

始発の列車で東京を発ち、六日町駅前を8時半に出発するバスに乗って山口まで。そして最初は区画整備された平坦地、やがてすすきの穂やコスモスの花の野原の向こうに八海山の屏風のような山体を見上げながら車道をてくてく30分歩いて、何台かの車が駐めてある二合目登山口に到着しました。ここから八海山への最もきつい登山道である屏風道に入るとすぐに屏風沢で、設置されているゴンドラに一瞬びっくりしましたがこれは増水時用。飛び石伝いに簡単に徒渉することができました。

山道は最初のうちは樹林の中を緩やかに高度を上げるとても歩きやすいものでしたが、巨岩の足元にお稲荷さんが祀ってある三合目を経ていくつかの涸れ沢や小沢を渡るうちに、徐々に傾斜がきつくなって鎖が出始めます。五合目あたりから前方には稜線直下の岩壁が見え始め、振り返れば魚野川沿いの平野とその上に広がる青い空。しかし、炎天下の中いつまでたっても近づかない稜線の遠さに、こりゃ三山縦走なんて絶対ムリ!と潔く諦め(←出発時刻が変わった時点であり得ない計画になっていたのですが……)八海山単体を目標とするピークハントに計画を切り替えることにしました。

鎖が連続するさしもの急傾斜も稜線上に建つ千本檜小屋のアンテナが近づく頃には緩み始め、最後のひと頑張りで小屋の真横に乗り上りました。有人の千本檜小屋には避難小屋が併設されており、我々は当初中の岳避難小屋に宿泊する想定で準備をしていたのでこの日は避難小屋に泊まることにしました(協力金1人1,000円)。小屋の建物の間を抜ける通路を通って東側に出ると、目の前には懐かしい越後駒ヶ岳の姿。その当時は知る由もありませんでしたが、今こうして見ればオツルミズ沢のサナギ滝が巨大な全貌をこちらに見せていることに気付きます。

千本檜小屋前からでは角度が悪くてよく見えなかった中の岳も、小屋から徒歩5分の薬師岳まで足を伸ばすとその全貌を見ることができて、15年前に日本百名山の99番目の山として越後駒ヶ岳から中の岳まで縦走したときのことを懐かしく思い出しました。翌朝はこの薬師岳から日の出の動画を撮ろうと考えて山頂広場に置かれていた木材3本を組み合わせて櫓を作り、小屋に帰還したらビールとコップ酒(もちろん「八海山」)を買い求めこの日の健闘を讃え合ってゴディーさんと乾杯しました。

しばし昼寝をしてから目を覚ますと、ちょうど夕陽が西に沈むところ。太陽が雲に隠れて姿を消すとともに眼下の平野には夜景が広がって、それはそれは美しい景色となりました。アルプスの奥深い山と違い、里からいきなり立ち上がっているこの山から見る下界の景色は、標高は低いのにかえって空の高いところにいる感覚が湧いてきて不思議な感動を覚えます。

2013/09/29

△06:00 千本檜小屋 → △07:10-30 大日岳 → △08:05-15 入道岳 → △08:40-50 五竜岳 → △10:00-10 阿寺山 → △12:50 広堀川橋

朝、まだ暗い内に薬師岳に出向きデジカメを櫓の上にセット。本当はGoProを持ってくれば良かったのですが、長駆縦走のつもりだったので軽量化のために持参しなかったのは失敗でした。そして案の定、1時間ほどしてから薬師岳に戻ってみるとなぜかデジカメはムービーを撮る職務を途中で放棄して勝手にシャットダウンしていました……。

既にかなり高さが上がった太陽が越後駒ヶ岳と中の岳の間から顔を出すのを確認してから、小屋を出発しました。この日の行程は、難所とされる八海山稜線のギザギザ=八ツ峰を縦走してから阿寺山に回り、前日登山を開始した山口へ下山する周遊コースです。キケン注意!転落したら助かりませんという物騒な看板を横目に見つつ、迂回路の分岐を通過して縦走にかかりました。

稜線上からの眺めは素晴らしく、特に越後駒ヶ岳の左奥に飯豊や朝日といった出羽の山脈らしきものを見出したときには思わず歓喜の声をあげました。そうした斜光の中の陰翳深い景観を楽しみながら次々に現れる岩峰(地蔵岳・不動岳・七曜岳・白川岳・釈迦岳・摩利支岳・剣ヶ峰・大日岳)を辿ると、それぞれのピーク上には石碑や銅像が設置されていて宗教的雰囲気が漂い、それらをつなぐ登山道に設置された鎖はいずれもしっかりしていて安心して身体を預けることができるものでしたが、それでもところどころ全体重を腕力で支えなければならない箇所もあってそれなりに気を使いました。

八ツ峰の最後のピークである大日岳の山頂で一休み。前日に阿寺山側から登って五竜岳の上で幕営したという単独の男性と会話を交わしましたが、なるほど、いろいろな登り方があるものです。長い鎖を下ってさらにもう一つピークを越えたら鎖場は終了で、そのまま南東へ少し進むと八海山最高峰の入道岳に到着しました。ここからの眺めも素晴らしく、左手に近い越後駒ヶ岳と中の岳はもちろんのこと、その右奥に平ヶ岳、さらに遠くに至仏山や燧ヶ岳、そして右手には比較的近くに巻機山も牛のような姿を寝そべらせており、それらをつなぐ尾根の上を滝雲が幾筋も越えようとしているのが不思議でした。

静寂の中で存分に山岳景観を楽しんだ後、脆くて足をとられやすい下り道を急降下。案外に苦労して着いたジャンクションピークが五竜岳で、そのまま左手に下っていく縦走路を辿れば400mの下りと800mの登りで中の岳に達しますが、我々が向かうのは右手の阿寺山方向です。ところどころに池や湿原を配置したこの縦走路は癒し系ではありましたが、日が高くなるにつれて気温も上がり、歩くのが徐々につらくなってきました。

灌木に覆われた道の途中に唐突に標識が立つだけの面白みのない阿寺山頂(本当のピークは少し離れたところ)からの下り道は、濡れて滑りやすい赤土の道の急降下が続き、いい加減勘弁してほしい!とキレかけた頃に蛇食ジャバミ清水と思しき沢筋に出ました。そこから水のほとんど涸れた沢をところどころの赤ペンキに励まされながら下り、ややあって再び樹林帯の中に戻って下降を続けると、ようやく竜神碑水場。ここで冷たい水で喉を潤し、さらに下った蛇食沢と入道沢の合流点で出会った親切な釣り人に道を教えてもらって、やっとの思いで車道に乗り上ることができました。もうここまで来ると山口まで残り3kmほどを歩こうという気はさらさらなくなり、広堀川橋まで出たところで意気地なくタクシーを呼ぶことにしました。

終わってみれば八海山は文句なしに素晴らしい山でしたが、阿寺山に足を伸ばしたのはちょっと余計だったかなという気もしないでもありません。それよりも、日本百名山完登に向けて山歴を積み重ねている最中のゴディーさんを百名山以外の山に引っ張ることになってしまったのは申し訳なし。ここはいつか、十分に計画を吟味した上で(!)越後駒ヶ岳側から縦走したいものです。