笹子川大鹿川ズミ沢
日程:2025/06/21
概要:滝子山の笹子側登山道にある道証地蔵からズミ沢に入渓し、モチヶ滝を越えてナメ帯が終わったところで脱渓。登山道を下って起点へ戻る。
◎PCやタブレットなど、より広角の画面で見ると、GPSログに基づく山行の軌跡がこの位置に表示されます。
山頂:---
同行:MIHOさん / kusutto氏
山行寸描
◎本稿での地名の同定は、主に『新版 東京起点 沢登りルート100』(山と溪谷社 2020年)の記述を参照しています。
もともとこの日は大菩薩嶺の東に伸びる牛ノ寝通りの南面の土室川シンケイタキ沢(桂川水系葛野川)に行く予定だったのですが、当日の朝になって起点となる松姫峠への道がクローズしていることが発覚。小菅村から2時間登ればシンケイタキ沢へのアプローチに使える尾根の下り口に着くことはできるのですが、暑い最中にあまり歩きたくない我々は相談の結果、最もコンビニエントな滝子山西面のズミ沢(同じく桂川水系)に向かうことにしました。
2025/06/21
△08:20 道証地蔵 → △09:15 三丈ノ滝 → △10:05 モチヶ滝 → △11:10 スラブ滝 → △11:20 脱渓 → △12:15 道証地蔵
ズミ沢は滝子山登山道に沿って流れる沢ですが、その最源流は滝子山の北隣の大谷ヶ丸です。しかし一般的にはそこまで詰めることはせず、途中で遡行を終了して登山道に上がることになるので、滝子山の沢として認識されているかもしれません。kusutto氏の車も笹子駅からの滝子山へのアプローチに使われる県営林道大蔵沢大鹿線を奥へ進み、登山口となる道証地蔵の手前1分のところにある駐車スペースに駐まりました。
駐車スペースで沢靴に履き替え、ヘルメットやハーネスも身に着けて歩き出し、道証地蔵にこの日の安全をお祈りしてから登山道をわずかに下ったら、道が木橋を渡るところが早くも入渓点になります。ところが少し先に釣り師が入っていたため我々は恐縮してしまったのですが、彼は自分ももともと沢登ラーだったと言いながら快く我々を先に行かせてくれました。ありがとうございました。
入渓してすぐにミニゴルジュのような地形になり、その中のところどころに小滝や釜が配置されていますが、どれも容易に突破することができます。
この連続小滝は面白く、下段は水流の左端が階段状になっており、短い中段を過ぎてからの上段は細かいホールドを拾いながら左右どちらからでも登ることができます。しかしその後は沢筋が開けて植林地の中の単調な沢歩きになるので、右(左岸)に並行している登山道を使ってショートカットすることにしました。
登山道が左岸から右岸に渡るところで沢に戻ると、すぐそこに現れるのが三丈ノ滝です。観察したところではヌメヌメと光って剣呑な感じ(履いているのはラバーソール)がしたのですが、昨年この沢を遡行しているkusutto氏を振り返ると「前回は登りましたけどね」と涼しい顔をしています。仕方なく(?)右から近づいて取り付いたところ、若干ホールドが脆いのと足元がやはり滑りやすいのとで慎重にはなりましたが、無事にクリアできてほっと一息。この滝の上はまたしばらく面白みのない歩きになるので、再び登山道を活用して時短を図りました。
適当なところで沢に戻り上流へ進むと、植林地が切れて広葉樹の森の中に大きな岩がごろごろし傾斜が強まる渓相になり、やっと沢登りらしくなってきたぞと喜んでいたら前方に大きな滝が見えてきました。
これがこの沢で最大の落差(30m)を誇るモチヶ滝です。豊富な水量を落とす立派な滝で、水流通しはさすがに無理。条件次第ではその右寄りのカンテが狙い目になりそうですが、見上げたところではこの滝もぬめりがありそうです。このためさらに右の凹角をロープを出して登ることにし、ロープを結びました。凹角の中もところどころにぬめりはあるものの足の置き場を選んで登れば問題はなく、10mほど登って乗越しを要する小さい壁に突き当たる手前の残置ピンにランナーをとりました。もしかするとここから水流の方向へ左上した方が楽だったのかもしれませんが、かまわずワンポイントがんばって(体感III+)目の前の壁を越えたら傾斜が緩みます。さらにロープ一杯(30m)伸ばせば安定した木に支点を作れそうでしたが、下で待っている二人を視界に入れた状態でビレイをしたかったので下から20mほどの位置に打たれていた2本のピトンを使って支点を構築しました。
支点を作った位置から落ち口までは確保不要な易しい登りですが、その上に広がるナメの斜面は見るからに滑りそう。右から巻き上がる選択肢もありそうですが、それではつまらないのでロープを結び換えてkusutto氏に水流沿いを先行してもらい、私とMIHOさんは確保された状態でナメの中を歩きました。
ガレた沢筋をぐいぐいと登っていくと現れる、この見栄えのする6m滝は右壁上にランペが通じており、これを使って簡単に滝の上に登り着くことができます。
最後の滝らしい滝は、レースのカーテンのように白く美しい水を落としているこの5mスラブ滝です。一目瞭然で右端の浅いクラックが弱点になっていて、うまい具合に足を置ける凹みが続いてはいるのですが、膝の故障のために立ち込みが難しい私はちょっとトライしただけでパス。ここでもkusutto氏が涼しい顔で登る姿を横目で見ながら、左(右岸)の土の斜面に付けられた踏み跡を辿りました。
スラブ滝の上には、予想していなかった綺麗なナメが続いています。後でトポを読み返したら、スラブ滝の上には沢幅いっぱいに美しいナメが広がり、この沢のフィナーレとなる
と書かれていて、確かにその通り、最後のご褒美という感じの素晴らしいナメ歩きを楽しむことができました。
ナメが尽きたところで遡行を終了し、わずか30秒の登りで右岸の登山道に達したら、細いながらも歩きやすいこの道を気分よく下ります。スラブ滝や6m滝は間近に眺められ、モチヶ滝は全貌を目にすることができなかったものの三丈ノ滝に挨拶をして橋を渡り、最後に道証地蔵に無事下山の御礼を申し上げたところで、この日の山行を終了しました。
大谷ヶ丸・滝子山周辺の沢ではこれまでに東面の大ゴ沢とアモウ沢を遡行しており、いずれはズミ沢もと思っていたので、予期せぬ事情からこの沢を遡行する機会を得られたのはラッキーでした。そして、この沢は登山道が並行していて気軽に取り組めるハイキング沢という認識でしたが、実際に遡行してみると最大のモチヶ滝は登りごたえがあり、最上流のナメ床も驚くほど美しく、短時間ながらも楽しい遡行になりました。なお、あえて言えば三丈ノ滝の前後の植林地の中が渓相としては面白くないのですが、ここは我々がそうしたように積極的に登山道を活用してショートカットするのが合理的だと思います。
下山後は私からお願いして笹一酒造の「酒遊館」に立ち寄りました。ここでお酒の調達かたがた甘酒アイスパフェを賞味したかったからですが、あいにくパフェはメニューから外されていた代わりに甘酒サンデーなるものが提供されていて、これまたすこぶる美味。帰宅してからこのことを私と同じく酒遊館ファンのトモミさんに自慢して、羨ましがらせたことは言うまでもありません。