広沢寺弁天岩
日程:2000/02/19
概要:岩登りのゲレンデ・広沢寺弁天岩で岩登り講習会に参加。
山頂:---
同行:黒澤敏弘ガイド
山行寸描
2000/02/19
△08:40-14:00 広沢寺弁天岩
岩への対処の仕方とロープの扱いをいつかきちんと学習しておきたい、とは前々からの希望ではありましたが、一念発起して『猫の森登山教室』の講習会に参加することにしました。昨年末に大枚はたいて買い込んだクライミング道具一式を背負って小田急線本厚木駅に降り立ったのが午前8時。客=生徒は他に1人だけで、さっそく車で広沢寺に向かいます。車中では、共に古くからのマック・ユーザーである先生=黒澤ガイドとオールド・マック談義に花が咲きました。
弁天岩の全景は上の写真の通りで、既に何人かが岩に貼りついていました。樹林の中でハーネスをつけ、シューズを履き替えてから、まず右手の傾斜が緩やかな方の岩の基部へ移動。黒澤ガイドがサンダルのまますいすいと登って下から10mくらいのところのアンカーにロープをセットした後、エイト環でのビレイの仕方をまず実践で習っておいてから、自分が登らせてもらいました(2番目の写真の右から3本目のルート)。傾斜は緩やかでホールドは豊富、しかも白く色が変わっているので一目瞭然です。そしてクライミングシューズのフリクションの効果には驚きを通り越して呆れるほど。登山靴では滑るのが怖くて足を置けないわずかな突起や窪みでも、クライミングシューズのつるつるのソールはしっかりとらえて体重を支えてくれました。というわけで難なくアンカーまで到達し、ロワーダウン(=ロープに体重を預けてビレイヤーに下ろしてもらう)。その後、ルートどりに制約をつけて登ったり、クライムダウン(=自分の手足を使って下りる)の練習をしてから、11時頃に早めの昼食休憩となりました。
午前の練習を通じて黒澤ガイドが強調していたことは次の2点です。
- 岩場をスピーディーに登降できるということは、それだけ危険地帯にいる時間を短くできるということ。つまりスピードこそが登山における究極の安全法である。
- 特に下りでは着地直前の数mに最も注意を払うべき。古文の授業で習ったような話ですが理由はちょっと違ってこの高さで落ちれば確保が間に合わず、しかも後頭部を打てば十分致命傷になるから。
ところでクライミングシューズは登っているときは気持ちいいのですが、歩くとなるともの凄く痛い。サイズの選び方は「『入る限り小さく』よりちょっと大きく」ということで歩きにはまったく適しておらず、2時間以上履き続けるのも難しいので、荷物を置いておいた場所に戻るとさっさとシューズをぬいで足を締め付けから解放しました。
手早く食事を終え、ロープの結び方の説明を受けてから、午後は長いルートを登ることにしました。シューズを履いて、まず午前と同じところで懸垂下降の練習を1回。いきなり?と思いましたが、やってみるとこの角度では恐くなく、むしろロワーダウンよりも快適です。ついで冬山訓練の3人組がプラスチックブーツにアイゼンをつけた状態で練習をしている横に移動して、今度はちゃんとシューズを履いた黒澤ガイドが再びするすると上に登り、岩壁の途中の地点に待機して客2人を呼び上げてから、再び上へ。黒澤ガイドの姿は視界から消え、ロープだけが上に伸びていくのを少々不安な面持ちで眺めているうちに、ロープの動きが止まってしばらくして黒澤ガイドから「登ってください」の声が掛かり、意を決して登りました(写真左端のルート)。今、ここをリードで登れと言われたら100%不可能ですが、黒澤ガイドにビレイしてもらっての登りは安心感が大きく、大胆に手足が出せて高度をどんどん稼げます。辿り着いた終了点は高度感がありますが、しっかりセルフビレイをとって眺めると恐怖はなく、むしろ気分爽快でした。
懸垂下降で一気に下まで降りて小休止の後、今度は右寄りのクラックを使うルートを登りました(写真左から2本目のルート)。途中のテラス(同じ写真でクライマーが2人立っているところ)から最初の2歩が難しいのですが、クラックに右手を入れ、左足を足下の小さなフットホールドにかけて身体を引き上げると(身長172cmの自分なら)そのまま左手をしっかりしたホールドに掛けられます。そこからバランスをとりながらクラック(一番上の写真の赤い上衣のクライマーの右手の岩の割れ目)を上手に使って直上すれば、上の方は傾斜が緩くなってきました。
8.5mm×50mを2本繋いでロープほぼいっぱいの長さを懸垂下降でゆっくり下って今日の講習は終了。黒澤ガイドにはズブの素人の私に対して初歩の初歩から懇切丁寧に教えていただきましたが、登り方については本人の力量を見極めた上で(危険を回避できる範囲内で)自主性を尊重する教え方をとっておられるようで、受講する側も大きな達成感を得られます。何もかも初めてのことばかりで、これから覚えなければならないことが山ほどありますが、とにかく楽しい一日でした。