矢ノ音
#1018 - 陣馬散歩
日程:2026/09/23
概要:藤野駅から矢ノ音を経由して明王峠に上がり、底沢峠から陣馬高原下へ下る。
◎PCやタブレットなど、より広角の画面で見ると、GPSログに基づく山行の軌跡がこの位置に表示されます。
◎GPSログのダウンロードは「ヤマレコ」から(要ログイン)。
山頂:矢ノ音 633m
同行:---
8月17日に沢登り中の事故で亡くなった山友アユミさんを偲んで、彼女が大好きだった陣馬高原下の蕎麦屋「山下屋」を訪問。この目的だけのためであれば単純に高尾駅からバスでアプローチすればいいのですが、そこは山登ラーらしく南から北へと山越えのルートを設定して数時間の歩きを前置しました。
2026/09/23
△08:45 藤野駅 → △10:20 矢ノ音 → △10:50 明王峠 → △11:00 底沢峠 → △11:35 陣馬高原下
前日までの天気予報では今日は曇り空ということだったのですが、当日の朝に最終確認すると7時頃に一時的に雨が降り、その後曇りになって午後から雨が降り続くという予報でした。今日は短時間で終了する計画なので、この予報なら山行に支障はないだろうと出発したのですが……。

藤野駅に着いてみればはっきりと雨。こんなの聞いてないよと思いつつ改札口を出ると、雨をものともせずに出発しようとしている単独行もいれば計画中止を相談しているグループもいて駅前は不思議な賑わい方をしていましたが、こちらはここまで来れば中止という選択肢はありません。駅から東に向かってしばらく車道を歩く行程は1カ月前の山行と同じですが、道端の彼岸花の赤、ツユクサの青、神社の境内に落ちている銀杏の黄色が季節の進み具合を示していました。


雨の中でも相変わらずハイカーに声援を送ってくれる地元の皆さんに励まされて到着した最初のポイントは奈良本園地休憩所で、当初の計画ではここからさらに10分ほど車道を進んだところから登山道に入るつもりでしたが、なるべく傘をさし続けられるようにと浄光寺の西を回って林道を辿るコースに転進しました。


この林道は8月下旬に奈良本峠へ上がったときに途中まで歩いていますが、今回は林道の終点まで歩くことになります。さすが車道だけに傾斜が緩く歩きやすいこの道は、ところにより山側の法面が崩れているところもあるものの歩行には支障なく、雨降りの中でも気分よく歩くことができました。


そればかりか車道終点から登山道に入っても道はよく整備されており、ずっと傘をさしたまま歩くことが可能です。なんだか山登りらしくないなと思わなくもありませんでしたが、なにしろ雨がしっかり降り続いているのでこれはありがたいことです。

矢ノ音に到着。この天気では当然のことですが、林道の入り口からここまでも、そしてここから明王峠までの間でも、誰にも会うことはありませんでした。


矢ノ音から明王峠への道は7月に歩いたばかりで、そのときは熊の糞を見かけて少し緊張しましたが今日はそうした気配もなく、熊鈴を鳴らしながら黙々と歩き続けたら明王峠に着いていました。


さすがは奥高尾縦走路、こんな天気だというのにハイカーやトレイルランナーが行き交う姿を見かけます。しかし道はところによりひどくぬかるみ、モチベーションを維持することが困難。予定では堂所山まで歩いてその北に伸びる尾根を陣馬高原下へ下ることにしていましたが、これも諦めてすぐ近くの底沢峠からとっとと下山することにしました。


かくして藤野駅から陣馬高原下までずっと傘をさしっぱなしのまま歩き通して、予約していた時刻より1時間以上早く「山下屋」に到着しました。ここからが本日のメインイベントです。
「山下屋」にはアユミさんも私もMy枡をキープしてあるので、アユミさんの枡を出してもらい私の枡と並べて乾杯。ここで飲む日本酒が大好きだったアユミさんも喜んでくれていることでしょう。

雨天にもかかわらず次々に訪れる客への対応の合間を縫ってアユミさんの思い出を語ってくれた三代目店主の話によれば、アユミさんが初めてここを訪れたのは10年ほど前のことで、そのときはまだ山歩きというものを始めたばかりだったということです。それがいつの間にかクライミングや沢登りに打ち込むようになり、去年からは海外にも積極的に足を伸ばすようになったのですから、その進化は加速度的。確かにこの世界には、緩やかなカーブを描くのではなく一気にステップアップするタイミングが訪れることが往々にしてあるものですが、それは事故に遭遇する確率も上がることを意味します。純粋な登攀スキルを追求するスポートクライミングとは異なり、登山活動の一環として行われるアルパインや沢登りにおける技術とは、そうしたリスクを極力回避し、仮にリスクが顕在化してもダメージを最小化するためのもので、アユミさんもそうした技術を十分に身につけていたはずなのに、今回発生したパーティ全滅という最悪の結果はいかなる計算違いに基づくものなのか。ここはひとつ、アユミさんの魂を呼び出して問いただしたいくらいです。
……などとくだを巻いてもアユミさんが姿を現してくれるわけではないので、お酒はほどほどに切り上げ、三代目の心遣いに御礼を申し上げて「山下屋」を後にしました。なお、引き続きキープしてもらえることになったアユミさんの枡には、来年の一周忌の頃に再び酒を注いでもらうつもりです。
◎アユミさん追悼記事は〔こちら〕。