南浅川小下沢

日程:2025/08/17

概要:高尾山北麓の大下バス停を起点に木下沢林道に入り、梅林の先で小下沢に入渓。2段5m滝の上で脱渓して林道に戻り、関場峠から堂所山に向かって山頂手前から陣馬高原下へ下る。

◎PCやタブレットなど、より広角の画面で見ると、GPSログに基づく山行の軌跡がこの位置に表示されます。

山頂:---

同行:---

山行寸描

▲2段5m滝。この沢では唯一の滝らしい滝。(2025/08/17撮影)

◎本稿での地名の同定は、主に『ウォーターウォーキング2』(白山書房 2013年・以下『WW2』)の記述を参照しています。

6月末の栗原川遡行の後に沢靴(ラバー)のソールが剥がれかけていることに気づいたため、モンベルのサワークライマーを新調していたものの、その後フェルトソールでの沢登りが続いてサワークライマーを試す機会がないままに8月も半ばになってしまいました。さすがにテストなしでシビアな沢に実戦投入するわけにもいかないのでどこか簡単な沢歩きで試し履きをしてみようと考え、選んだ行き先は高尾山の北麓にある小下沢こげさわです。

この小下沢は堂所山を源として奥高尾縦走路と北高尾山稜の間を流下し、南浅川〜浅川を経て多摩川に合流する沢で、ウォーターウォーキングの対象としてそれなりに人を集めているようですが、そのことからもわかるように「歩き沢」であって登攀とはほぼ無縁。遡行対象となっている区間の最後に一応2段5m滝があるもののグレードとしてはIII級程度らしいので、今回の遡行の趣旨にマッチしているというわけです。そんなわけで沢用の装備はヘルメットとシューズだけ。ハーネスもロープも今回は持参しませんでした。

2025/08/17

△08:35 大下バス停 → △08:50-55 入渓 → △09:45 小下キャンプ場跡(木橋) → △10:45 2段5m滝 → △11:15 関場峠 → △11:30 堂所山手前(登山道から離れる) → △12:05 陣馬高原下

高尾駅北口から小仏行きのバスに乗り、途中で降りた大下おおしもバス停がこの日の山旅の起点。ここで降りた乗客は私を含めて二人だけでした。

地図を見ると大下よりも手前の「梅の里入口」バス停の方が目指す木下沢林道に近いのですが、こちらは不思議なことに上り(小仏→高尾駅北口)だけ停まる片方向バス停なので、行きはスルーされてしまいます。

ついでに書くと、地形図を見ると小下沢が谷筋を出るところは等高線が上がっていて沢の出口が塞がれているように見えるのですが、これはどうやら中央高速道の建設に伴う地形の変更によるもののようで、小下沢はここでは地下を通っている模様です。なるほどそういうことであったか、と勝手に納得しながら中央高速道の下をくぐると道の右側はかなりの規模の梅林になっていて、早春には見事な景観だろうと思われました。

そんな具合にきょろきょろしながら歩いているうちに、ふと左下を見ると沢登りルックの一団が行軍中でした。しまった、入渓点を通り過ぎてしまったかとここから少し引き返すと……。

「林道木下沢線」(なぜ「小」ではなく「木」なのかは不明)の看板の左に沢に降りる道があり、その先には丸太橋も設置されていました。なるほど、ここから入渓するのがよさそうだとうなずいて、沢に降りたところで沢靴に履き替えました。

歩いてみると思っていた以上にムードのあるパートがあって、確かに気持ちの良い沢歩きができます。ただ、トポにはウォータースライダーができそうな2mナメ滝があると書かれていますが、それほどの滝は認識できませんでした。

沢のすぐ隣には木下沢林道が通っており、随時エスケープ可能です。この日は猛暑にもかかわらず、トレイルランナーがひっきりなしにこの道を行き来していました。

沢に入って50分ほど、最初に見かけた一団を追い抜かしたところで再び木橋が沢を横断する場所に出ました。この右(左岸)にある開けた一帯は小下沢キャンプ場跡で、この木橋から左に登れば景信山、右に登れば北高尾山稜に登ることができます。抜かした一団はここで遡行を終了するようでしたが、自分は引き続き先に進みます。

するとすぐに出てきたのは高さのある堰堤で、これは右から越えてそのまましばらく林道を歩き、適当なところで沢に戻りました。

倒木がうるさい区間もあれば、水がきらきらと輝いてきれいな釜もありと沢の表情は多彩ですが、全体としては前半(小下沢キャンプ場跡より下流)に比べて潤いが少ないような気がします。

2番目の堰堤は左に踏み跡があったのでそちらから越えられるかと思ったのですが、実際にこれを登ってみたところ堰堤を越えるのは難しそう。仕方なく少し下流に戻って林道に這い上がり、再び林道を少し歩いてから沢に戻りました。

このゴルジュっぽい地形は例外的にいい感じ。そうそう、沢はこうでなくては。

見れば細長い釜を持つ小滝の向こうに、高さは低いもののフットホールドが細かく滑りやすい2条滝があって、ここは慎重に越えました。ただ、このゴルジュ地形が続くかと思いきやそうはならず、すぐにまた面白みのないただの歩き沢(しかも蜘蛛の巣多し)に戻ってしまったために少々落胆してしまいました。

それでも、やがて左から入る枝沢の奥に10m滝が見えたらゴールは間近です。

まず出てくる2m滝は、水流の右側の細かいホールドを拾って突破。この後に出てくる5m滝よりもこちらの方が難しいかもしれません。

続く2段5m滝は沢がヘアピンカーブを描いているところに左から落ちてきており、1段目は右壁に顕著な凹角があるのでここを登ります。2段目は凹角を抜けたところから水流側に回り込んで登ることもできますが、凹角の延長線でまっすぐ登ってしまうのが簡明で、そこで林道との高低差がぐっと減るのでそのまま林道に上がりました。沢はもちろんこの滝の先にも続いていますが、トポによればこの先は水が減りボサも多くなるということなので、ここで遡行を終了することにしました。ここまでの所要時間は、入渓点から途中の木橋までが50分、そこからこの滝の上までがちょうど1時間です。

遡行を終えたら林道を下って起点に戻ることもできるのですが、この日は久しぶりに陣馬高原下の「山下屋」を訪ねることにしているので、そのまま林道を奥に詰めて関場峠に乗り上がりました。

関場峠から陣馬高原下へは、正規の登山道を使うとすれば堂所山を越えて底沢峠から下ることになり2時間近くかかってしまいますが、堂所山の手前で北に下る尾根を使えばその半分ですむことは一昨年に経験済みです。おかげであらかじめ予約してあった正午をほんの少し回った時刻に「山下屋」に到着することができました。


店の奥の更衣スペースで上から下まで着替え、顔も洗ってさっぱりしたらまずは生ビールで乾杯!その後、蕎麦前を楽しみながら小下沢の遡行を振り返ったのですが、必須と思われる装備はヘルメットだけで、濡れてもいいのであれば沢靴でなくても歩けますし、水位の方は釜の中でも浅瀬を選べば膝まででしたから確かに初心者向き、と言うより初めての沢体験に向いていると言えそうです。ただ、入渓点から登山道が横断するところまでの間は雰囲気もよく楽しい沢歩きだったのに対し、その後はちょっと単調でダレた感じが否めませんでした。よって、滝登りにこだわらないのであればこの沢は前半(遡行1時間)で早々に切り上げ、そこから景信山に登って(歩き1時間強)山頂でのんびり茶屋ライフを楽しむのが吉だろうというのが私の結論です。

ところで肝心の試し履きの方ですが、新調したシューズは履きやすくて歩きやすいのはいいものの、そのことの裏返しとしてフィット感が甘いところがあり、このままでは細かい岩に立ちこむのは厳しそう。ただしソックスを厚手のものに変更することで改善できる可能性があるので、次回はその線を試してみるつもりです。