北秋川神戸川クドレ沢(敗退)

Rec. 1008

日程:2026/06/22

概要:神戸岩入口バス停から神戸川沿いの道を上流に向かってクドレ沢出合で身繕いをし、入渓。二俣の手前にある石滝まで進んだところで遡行を中止し、仕事道を使って出合に戻りバス停まで帰還。

山頂:---

同行:アユミさん

◎本稿での地名の同定は、主に『東京周辺の沢』(白山書房 2000年)の記述を参照しています。

10日ほど前にヒマラヤのメラ・ピーク登山から戻ってきたアユミさんのリハビリ沢。あまりヘビーにならない沢を遡行して、下山したら温泉に入って酒を飲もう!というコンセプトで選んだ行き先は、奥多摩の沢の中にあって前から気になっていたクドレ沢です。計画では、その左俣を遡行して大岳山近くの稜線に上がり、時間次第で奥多摩に下ってもいいし御嶽へ降りてもいいしと柔軟に考えることにしていました。ところがどっこい、必ずしも思ったようにはならないのが山登りというものです。

2026/06/22

△09:15 神戸岩入口 → △10:05-30 クドレ沢出合 → △11:05-10 5m石滝の上 → △11:35-45 クドレ沢出合 → △12:35 神戸岩入口

武蔵五日市駅からバスで30分ほど、神戸岩入口バス停が今回の山行の起点です。

大岳山の南西にあたる神戸川かのとがわの流域は、奥まった位置にあるにもかかわらず立派な神社(春日神社)と集落、おしゃれなロッジ、キャンプサイト、釣り堀などが連なってよく開けています。お天気も朝のうちは晴れ模様で、気持ちの良いアプローチをこなして谷の奥へと進みます。

WCを伴う駐車スペースの向こうに見えてきたのが、堂々たる神戸岩かのといわです。あの岩は神戸川が作るゴルジュの両岸に聳え立っており、そこにあった解説によれば岩質はチャート。ゴルジュの延長線上に大嶽神社があることから、神域への出入り口に見立てられたのが名前の由来であろうということでした。ゴルジュの中には短い遊歩道が設られていますが、こちらは沢登りが目的で来ているのでパス。渓谷に降りずにそのまま車道のトンネルを進んだところ、トンネルの出口から振り返ってみるとこの渓谷(ゴルジュ)を通ってもさして遠回りになるわけではないということが判明しました。なんだ惜しいことをしたな、などと話しながら先を急いだのですが、この時点では再びここに戻ってくることになるとは夢にも思っていませんでした。

やがて到着したクドレ沢の出合の橋の上で身繕い。トポによれば橋のわずかに上流側から仕事道が二俣まで続いておりこれを辿って下部をショートカットすることが推奨されていましたが、さして長い流程でもないし、せっかくなのでここからただちに入渓することにしました。

トポが仕事道を辿ることを推奨したのは下流部は平凡だからという理由でしたが、蓋を開けてみるとちょっとしたややこしい段差や釜があって意外に飽きません。

かたや右岸の仕事道を見ると朽ちた桟道が危なっかしく掛かっていて、あそこを渡るくらいなら沢の中を進んだ方がいいんじゃないの?とこのときは思いました。

そうこうするうちに現れたのは見栄えのする滝で、トポによればこれは「2段5m滝」となっています。登路は一目瞭然、中央から取り付いてやや右に一段上がり、そこから滝の中央方向に登って落ち口となりますが、ここでアクシデント。先に上に抜けた私が見下ろしていると、後続のアユミさんは上段を登ろうとするところでスリップしてしまいました。幸い下まで落ちることはなく、わずか1m弱のフォールですんだのですが、そのとき岩の出っ張りに腰のあたりをぶつけてしまったようです。それでも、このときは問題なく登り直してくれたので胸を撫でおろしたのですが……。

続く「5m石滝」も実際には2段構成で、左寄りを水をかぶりそうになりながら一段上がるところが若干微妙ですが、下段の上に乗ってしまえば上段は階段状です。

ところが、この下段と上段との間の小さなテラス状のところでアユミさんを迎えると、彼女はぶつけたところの痛みが強くなっていることを明かしてくれました。それはイカン!まずは滝の上に抜けて、それから様子を見ることにしましょうと二人してこの滝を登り切り、そこでリュックサックを下ろして傷めた箇所を確認したところ、ぶつけたところは腰ではなくその少し上の背中でした。骨に響く怪我ではなさそうであっても、痛みが続くようならこの後に控えている滝の連続をこなすのは困難ですし、ここからは仕事道を使って下ることもできるので、決断するなら今このタイミングです。アユミさんはここでの遡行中止をずいぶん悔しがっていたものの、最後は自分で判断してくれて、ここから引き返すことになりました。これは適切なジャッジだと思いますよ、アユミさん。

そうと決まればさっさと下るばかり。先ほど登った石滝の左岸の際に薄い踏み跡があり、よく見るとそこにはトラロープも張られていたので、これを使って二つの滝を巻き下りました。さらに小さな段差があるところから右岸に移って、これも薄い踏み跡を快調に辿ります。

気になっていたのは遡行途中で見上げた朽ちた桟道ですが、そこにはしっかりしたロープがフィックスしてあり、思ったほど難しくなく向こうの尾根上(ロープが結ばれているところ)へ渡ることができました。

その後も道は明瞭で、あっという間に車道に降り着くことができ、朝方と同様に橋の上に店を広げて沢装備一式をリュックサックにしまいました。気になるアユミさんの負傷の方は、幸いにして痛みを増すこともなく落ち着いた症状のままのようです。

せっかく同じところへ戻ってきたので、行きにスルーしてしまった神戸岩の渓谷コースを歩いて帰ることにしました。このゴルジュは神戸川の侵食によってできたものだと思いますが、硬いチャートすらも穿つ自然の力をまざまざと見せてくれるという点で、短い距離ながら見応えがありました。

ところで、往路に立ち寄った春日神社で私はお賽銭を納めてこの日の遡行の安全を祈願したのですが、アユミさんはお祈りをしていませんでした。負傷することになったのは信心を疎かにしたせいではないのか?と反省した我々は帰路、道すがらの山神社に手を合わせ、春日神社にもあらためて訪れて、大事に至らずに帰還できたことの御礼を申し上げました。


下山後の行程を記すと、おなじみ「瀬音の湯」でアルカリ泉につかってお肌をつるつるにしてから、武蔵五日市駅近くの会席兼蕎麦屋で打ち上げです。

遡行中断になったのは残念でしたが、主目的(?)である温泉と飲みを実行できたので満足度は高かった一日。クドレ沢の方はもちろん、日を改めて訪問するつもりです。

これで終われば平和な記録だったのですが、翌日、アユミさんは腰椎横突起を骨折していたことが判明しました。うーん……。