火打・妙高の池巡り
日程:2025/10/12-13
概要:笹ヶ峰から高谷池ヒュッテに達し、天狗の庭まで足を伸ばしてから高谷池ヒュッテ泊。翌日、妙高山登頂の予定を変更し、長助池を眺めてから燕温泉に下る。
◎PCやタブレットなど、より広角の画面で見ると、GPSログに基づく山行の軌跡がこの位置に表示されます。
山頂:---
同行:トモミさん
山行寸描
スポーツの日の三連休は〈長女〉トモミさんと共に紅葉の秋田駒ヶ岳から北に向かって2泊3日で縦走する計画でしたが、東北地方の天気予報の悪さのために直前になって計画を縮小し、1泊2日で比較的空模様が安定していそうな頚城の山々に足を向けることにしました。しかも、プランとしては高谷池ヒュッテに泊まった翌日に火打山と妙高山のピークを踏むことにしていたのに、2日目の天気の推移に伴い、火打山・妙高山登山→妙高山のみ登山→火打・妙高の池巡りとコンセプトがどんどんダウングレード。しかし、おかげで予定外の景色が見られて、これはこれでよい山行になりました
2025/10/12
△10:40 笹谷峠 → △14:30-15:00 高谷池ヒュッテ → △15:30-45 天狗の庭 → △16:05 高谷池ヒュッテ
妙高高原駅から笹ヶ峰行きのバスは1日3便。そのうちこの日のうちに高谷池ヒュッテに着くためには2便目(9時40分発)に乗らなければなりませんが、私はかろうじて自宅発で間に合うのに対し、トモミさんはそれでは間に合わないので大宮での前泊が必要でした。


長野駅から妙高高原駅に向かう車窓からは黒姫山や妙高山の姿が見えて、なんだか懐かしい気持ちになりました。妙高高原駅で列車を降りたら駅を出て右の方に進むとモンベルの店舗が併設された観光案内所になっており、そこが笹ヶ峰直行バスの乗り場になっています。約50分間のバスの旅で笹ヶ峰に到着すると、この日の好天をあてこんだ観光客や登山客の車で駐車場はそこそこの混み具合でした。


トモミさんの腰にはマイ熊スプレーと共にコンパクトなカメラ。トモミさんとの山行では、写真撮影が大きなウェイトを占めるために標準コースタイムのアバウト1.2倍くらいの時間を見込むことになるのですが、今回は2日目の行程が長いことと天候に不安要素があることから機動性重視のチョイスとなったようです。もっとも前泊やら何やらでリュックサックは若干重め。がんばりましょうと気合いを入れて、ゲートで入域協力金500円を支払ってから出発しました。


笹ヶ峰からしばらくは美しいブナ林の中の緩やかな登りで、そのところどころにはナメコをはじめとする各種キノコが生えていました。中には本格的に部隊を組んでキノコ採取に精を出している人たちもいましたが、このあたりは国立公園内かつおおむね国有林なので、許可を受けずにキノコを採取すれば違法となる可能性が大。もちろん我々が「とった」のは写真だけです。


黒沢の橋を渡ったら十二曲りと呼ばれるつづら折れの急坂になり、標高を上げるにつれて紅葉が見られるようになってきました。背後には乙見湖の向こうに高妻山や戸隠山が見通せて気分がいいのですが、十二曲りが終わったら平坦になるかと思いきや、さらに淡々と標高を上げ続けなければならないのがつらいところです。

やっと富士見平に着いて黒沢池方面の道を右に分け、高谷池方面へ進むと道が平坦になって周囲が開けてきました。右に見えているのは妙高山の外輪山である三田原山、左前方は火打山から南東に伸びる尾根の末端にあたる黒沢岳です。

火打山が見えてきました。その向こうには焼山も特徴的なドーム型の姿を見せています。私が火打山と妙高山に登ったのは1989年のことで、そのときは焼山は火山活動のために登山禁止だったと記憶していますが、今は登山届を提出すれば縦走が可能となっています。


高谷池ヒュッテに到着。今回は小屋泊り(完全予約制)ですが、高谷池の畔のテントサイトも気持ちが良さそう。ただし、清潔な水を得ることが難しい点がここでのテント泊の課題です。


受付をすませて旧館2階の宿泊場所に案内されると、かつてであれば間違いなく2-3人分とされていただろう広いスペースを1人用としてあてがってもらえ、しかもそれぞれがカーテンで仕切られていました。とりあえず荷物を置いて1階のカフェでケーキセットをいただき、カフェの営業終了時刻である15時になったところで天狗の庭へ散歩に行くことにしました。

ヒュッテから少し歩いたところから振り返ると高谷池の全景があり、その向こうには黒沢岳越しに妙高山が山頂を覗かせています。上空の雲がずいぶん速く動いているのは風が強い証拠ですが、これでは明日に向けて天候の変化も早いのかもしれません。

天狗の池へは緩やかな尾根を乗り越すことになりますが、この道がなんとも言えずステキ。我々と同様に天狗の池までの散歩を終えて戻ってくる何人かの登山者と行き交いましたが、みな一様に幸せそうな表情をしていました。

尾根上の木道が火打山に向けて下り始めると、木道に沿って流れる清流が下る先に高層湿原である天狗の庭が見えてきました。


天狗の庭に到着。見下ろしてもいいし、近づいてもよく、その向こうの火打山を眺めてもいい。この日も含めて連休の天気予報は山岳展望を期待できるものではなかったのですが、今日に限ってはいい方向に外れてくれたようです。

天狗の庭にはいくつもの池が散らばっていますが、正面の大きな池には「逆さ火打」が映っていました。前回ここに来たときにこうした眺めに出会った記憶がないのですが、そのときはまだ10月下旬だったにもかかわらず雪に覆われていたため、今とは景観が異なっていたようです。

高谷池ヒュッテに戻ってくると、レスキューヘリがホバリング中でした。実はヒュッテへ向かう途中の平坦な道でうかない顔をした若者と何やら電話で打合せ中の壮年男性とを見かけていたのですが、後でわかったことによると二人は親子で、息子さんの方がここで足を傷め動けなくなってしまい、救助を要請したのだそうです。後日の報道によれば骨折の疑いもあるということでしたが、この手の話は「なんでこんなところで?」と他人ごとにするのではなく「こういうところでも怪我するものなのだな」と自分ごとにするのが大事です。
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ヒュッテに戻ったらようやく乾杯!お互い持参したアテをシェアしながら軽く口を湿し、ついで私は日本酒の飲み比べセットにも手を出しました。いずれも個性があっておいしい日本酒にいい気持ちになってからカレーとハヤシライスの夕食をいただきましたが、ここでちょっと失敗。この日の夕食は2回制で我々は1回目だったのですが、1回目に与えられた時間は30分しかありません。したがってたくさん食べたい場合は最初は少なめにご飯を盛って早々に食べ切り、ただちにおかわりをするのがコツだったのに、出遅れた私は1回目の制限時間終了間際におかわりをしようとして「もうありません」と言われてしまいました。うむー、この経験はなんとしても次に活かさなければ。
2025/10/13
△06:20 高谷池ヒュッテ → △07:30 黒沢池ヒュッテ → △09:25-45 長助池 → △13:05 燕温泉
冒頭に記したように、2日目は早出をして火打山をピストンするつもりだったので朝食は自炊としていましたが、昨夜の天気予報ではこの日の朝方は雨模様ということだったので、火打山登山は早々に断念することになりました。そんなわけでゆっくり目の5時に起床し、あらかじめ指定されていた自炊可能場所で自前の朝食をとってから出発の準備に取り掛かりました。


出発はすっかり明るくなった6時20分。霧雨よりは雨粒がはっきりした小雨という状態です。


昨日歩いた天狗の庭への道の途中から右へ折れて、結果的に今回の山旅の最高地点となった茶臼山(2171m)を越え、黒沢池ヒュッテへ向かいます。この前後の道は登りも下りも緩やかで、雨の中でも歩きやすいものでした。

……とは言うものの、せっかくの眺めがガスに霞んでしまっては意気が上がりません。眼下に黒沢池(のほんの一部)がぼんやりと現れたときは多少モチベーションが上がりましたが、これも本来の姿ではないはずです。


はっきり雨模様の中、黒沢池ヒュッテには立ち寄らずにその前で小休止をとってから、引き続き妙高山方面の道に入ります。このとき黒沢池ヒュッテの宿泊客二人もほぼ同時にここを発ちましたが、彼らはそのまま下山するらしく富士見平方面の道に入っていきました。


道は妙高山の外輪山の一角にあたる大倉乗越を越えて、外輪山の内壁に沿ってほぼ水平に南に向かいます。そのところどころには鎖もありますが、さして危険があるようにも思えません。これはおそらく、初夏まで残る残雪の横断の際に滑落する事故が多いのでしょう。


差し当たっての危険はむしろこの横断道を歩いている途中で感じた獣臭で、腰の熊鈴をしっかり鳴らし、いつでもスプレーを取り出せるように意識を集中させながら歩き続けて長助池分岐に到着しました。妙高山の頂上へはここから急坂の登りを1時間あまりこなさなければならないのですが、この調子では山頂で展望に恵まれることはなさそうです。それにトモミさんも私も妙高山にはすでに登ったことがあるので、それなら外輪山と中央火口丘の間を北に回って長助池経由で下山することにしようと意見が一致しました。


長助池へ向かう道(燕新道)は手元の『山と高原地図』では破線ルートになっていますが、実際にはピンクテープを伴ってよく整備されており、なんら不安なく歩くことができました。そして……。

目の前に広がったのは草紅葉の中に池塘を点在させ、周囲を紅黄葉で囲まれた長助池のすてきな眺めでした。これにはトモミさんも私も大喜び。どうやら妙高山のピークハントをやめてこちらに回ったのは良い判断だったようです。

しかも天も我々に味方して、ちょうどここに着いた頃から雨が上がって霧も薄くなり、見通しがよくなってくれました。トモミさんからは事前に雨男モードは今回封印でお願いします
とかたく言いつけられていたのですが、これなら上出来では?(と悦に入る私↑)


実はこの日、トモミさんは雨を嫌ってスマホだけで写真を撮っていたのですが、いったんここを立ち去りかけてからやはりちゃんとしたカメラで撮り直したいとベンチに戻って、リュックサックからカメラを取り出したほどこの場所が気に入った様子でした。

20分ほどの撮影タイムをとって、なおも名残惜しい長助池に別れを告げたら、燕温泉に向けて下山します。


長助池からの道は緩やかに下り、硫黄臭が漂う芝沢や外輪山へ上がる道を分ける大倉分岐を通過します。大倉分岐あたりには地図上では大倉池があってこれも見られるかと期待したのですが、残念ながら池の姿を眺められるポイントは見当たりませんでした。


さらに清冽な水を滾々と湧き上がらせる黄金清水を過ぎる頃から、再び雨脚が強くなってきました。この雨の中で急坂を下る道はぬかるみ、スリップに神経を使いながらの歩きになりましたが、トモミさんの歩くスピードは一向に落ちません。最初の方で「トモミさんとの山行では標準コースタイムのアバウト1.2倍くらいの時間を見込む必要がある」と書きましたが、決して歩行速度が遅いわけではないことはこのことからも明らかです。そんなわけで先を行くトモミさんにたびたび待ってもらいながら下り続けるうちに、行く手にこのルートでの唯一の懸念だった大倉谷の渡渉点が見えてきました。
もし増水していたらここは渡ることはできず、そうなったらせっかく下ってきた道を登り返して外輪山に上がることになるところでしたが、昨日・今日の降水量からの読み通り沢の水位は上がっておらず、飛び石をつないで難なくここを渡ることができました。


渡った先では川沿いを下ることになりますが、そこには固定ランプとケルンが置かれていて迷う気遣いはありません。そしてしばらく下流に進んだところから右岸の森の中に入り、やがて妙高山頂からの道に合流すればもう安心です。


山行のゴールとなる燕温泉の手前では、先ほど渡渉した大倉谷に南から合わさる北地獄谷を少し遡ったところに野湯である「河原の湯」があって、温泉フリークでもあるトモミさんのたっての望みでそちらに足を向けたのですが、やはりと言うかあいにくと言うかカップルが入浴中で、我々はそのお邪魔をしてしまうことになりました。スミマセン。


合流点に戻り橋を渡れば水平な車道になって、わずかの歩きで燕温泉に到着です。振り返ってみるとこの日はほとんど雨降りになってしまいましたが、それでも穏やかで楽しい山歩きを堪能することができました。
燕温泉には日帰り入浴ができる温泉宿が複数ありますが、我々はバス停に最も近く以前トモミさんが訪れたことがあるという「花文」に入りました。


この温泉宿の男湯は昭和銭湯風の激シブ内湯
だということをあらかじめトモミさんからの情報[1]として知っていたので、怖いもの見たさのような感覚も手伝ってここを選んだところ、入ってみてなるほど納得!露天風呂があるという女湯と比べると、この男湯はあまりにも施設に年季が入っており作りもそっけなくシンプルで、まさに激シブ
です。ところが、湯につかると評価は一変。この温泉は熱めの湯と深い湯船が好きな私の好みにぴったりで、実に気持ちよくつかることができました。ただしあまり長くつかっていると湯あたり必至なので、入浴は早々に切り上げて乾いた衣類に着替えたのですが、おかげで身も心もさっぱりとして帰路に就くことができました。お世話さまでした。
ベアスプレーのレンタル
上述のとおりトモミさんは自前の熊スプレーを持ってきましたが、私はモンベルのベアスプレーレンタルサービスを利用しました。モンベル渋谷店で借りてきたこのスプレーは「フロンティアーズマン マックス ベアスプレー」で、ホルスターとセットで3日間2,500円・保証金12,000円。この「3日間」の前日に借りて期間終了翌日に返却する仕組みです。噴射距離は12.0mで、腕をまっすぐ伸ばし、スプレーをやや傾けて、クマの顔と目を狙い3秒間プッシュ。これにより成分が霧状に広がりバリアを作るので、クマがひるんだすきに安全な場所に逃げてください、というものです。
写真の黒いものはホルスターで、リュックサックのショルダーストラップに取り付けやすい作りになっていますが、正直に言うと、このホルスターからスプレー本体を取り出し、誤射防止のセーフティクリップ(白いプラスティック)を外してクマに狙いをつけるという一連の動作を素早く行える自信はありませんでした。今回は「ものは試し」と思って借りてみましたが、おそらくクマより先にこちらが相手の姿を見つけて身構えるゆとりがなければ効果を発揮させられないだろうな、というのが携行してみての感想です。
トモミさん作品集
脚注
- ^zenigame1さん「燕温泉 源泉の湯 花文 昭和銭湯風の激シブ内湯に日帰り入浴」『大露天風呂の日記』(2025/10/15閲覧)





