櫛形山
日程:2025/07/05
概要:池ノ茶屋登山口から歩き始め、櫛形山山頂と裸山を経てアヤメ平に達したのち、西斜面を横断して起点に戻る周回コース。
◎PCやタブレットなど、より広角の画面で見ると、GPSログに基づく山行の軌跡がこの位置に表示されます。
山頂:櫛形山 2052m
同行:メグミ先輩 / いず女史
山行寸描
今年の5月に山仲間のセキネくんが韮崎に登山用品店「NEXT MOUNTAIN」をオープンしたところ、彼と私の共通の友人であるいず女史から「自分も買い物に行きたい」とうれしい申し出がありました。現在はどちらかと言えばハイキング志向の彼女と行くなら花の山歩きと組み合わせるのがいいだろうと、6月ならツツジの甘利山、7月ならアヤメの櫛形山を行き先候補として日程調整した結果実現したのが、今回の櫛形山→次山ツアーです。同行いただいたのは昨年の奥武蔵・大平山でご一緒した大ベテランのメグミ先輩で、山の植物に関するその該博な知識には今回も驚かされることになりました。
2025/07/05
△09:20 池ノ茶屋登山口 → △10:25 奥仙重 → △10:40-50 櫛形山山頂標識 → △11:35 裸山 → △12:00 アヤメ平 → △14:10 池ノ茶屋登山口
東京都内にいるうちは悪くなかった天気が小仏トンネルを抜けたとたんに一面のガスになり、甲府盆地から櫛形山の麓に達して林道を登るにつれて車のフロントグラスをぽつぽつと叩くものあり。昨日の天気予報ではこうはならないはずだったのに……と思いながら暗い気持ちになったのですが、どうやら雲は櫛形山の中腹にかかっていたものだったようで、池ノ茶屋登山口に着いたところハイキングに支障ない空模様になっていました。


この山の売り物であるアヤメの時期とあって登山口近くの駐車場は満車でしたが、少し戻ったところにある分かれ道に車を駐めることができ、身繕いをして出発です。


いきなり登場したのはキバナノヤマオダマキ。清楚な雰囲気を漂わせるこの花にはこの後あちこちでお目にかかりました。最初から写真撮影タイムになってしまったために足はなかなか捗りませんが、それでも林間の歩きやすい道をゆっくり登っていくと……。

尾根の上に乗り上がったところで今度はバイケイソウの群落の向こうに富士山のシルエットが顔を出しました。空の雲もかえってムードを作ってくれていて、なんとも言えない風情があります。

目を転じればバイケイソウの中に登山道が通じていますが、いかにも南アルプス前衛の山らしくサルオガセが垂れ下がっている様子が目を引きます。
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やがて急な斜面に差し掛かると、アヤメやグンナイフウロをはじめ各種の花が目立つようになりました。しかし、新しい花を見かける都度メグミ先輩が名前を教えてくれるのですが、中には早口言葉のような難しい名前の花もあってとてもついていけず、それらの名前を覚えることは早々に諦めました。

そんな根性のない私には、斜面の途中に設けられていた南アルプスエリア眺望ポイントからの南アルプス(ほぼ)全山の眺めがうれしいご褒美になりました。右の端にはちらっと甲斐駒ヶ岳、ついで白峰三山、白峰南嶺が連なり、悪沢岳・赤石岳・聖岳・上河内岳と主脈南部の山々が続いて、それらの左端には双耳の笊ヶ岳が見えています。櫛形山がこれほど展望に恵まれた山だとは知りませんでした。

かたや、こうした巨木が点在するのもこの山の魅力です。この木はいったいいつからここに立ち、麓の甲府盆地や彼方の富士山を眺めてきたのか。


やがて、三角点標柱がぽつんと立っている広場に出ました。ここは地形図に山頂らしく書かれている場所ですが、そこにあった標識には「櫛形山(奥仙重)」という地名表示と共に「山頂は→」とさらに先を指し示す注記が書き加えられていました。


そんなわけでさらに15分ほど歩き続けたところ、今度こそ山頂標識が整備された場所に到着しました。ここで大休止をとることにした我々は、ちょうど富士山のシルエットと向き合える場所に横たわっている木の幹に腰掛けてのんびり行動食を口にしました。

山頂周辺はカラマツ、コメツガ、シラビソなどの原生林になっており、ちょっと暗い印象を受けますが、登山道は土が適度に柔らかく歩きやすいものでした。そう言えばトレイルランナーの姿も見掛けましたが、確かにこの山は標高の高いところを起点にすればアップダウンも少なく、ハイカーの姿が少ない季節と曜日を選べば気持ちよく走れることでしょう。


さらに緩やかに歩いて着いたのは裸山で、ここにはアヤメ平よりも見事だというアヤメ群落がありました。もっとも登山道と群落とがネットで厳重に遮断されてしまっているのは興醒めと言えば興醒めなのですが、シカの食害からアヤメを守るためには仕方ありませんし、もしかするとシカ以上に人間から花々を守るためにもこの措置は必要なのかもしれません。ともあれ、このネットに沿って時計回りに回って登り着いた裸山のてっぺんでは大勢のハイカーが寛いでおり、何かをバックにして記念撮影に興じているグループもいました。

記念撮影の背後の景色が実はこちら、正面に聳える北岳と間ノ岳の雄々しい姿です。ありがたいことにこの頃には青空が広がっており、絶好の山岳展望を楽しむことができました。


この日の一応の目的地であるアヤメ平は、裸山から20分ほど下ったところにある草原です。予習不足のためにここは高層湿原だと思い込んでいましたが、実際には比較的乾燥した草原になっていて、その中に木道が通じ、一角には休憩舎とベンチが設置されています。

その地名のとおりここはアヤメの群落で有名だったものの、シカの食害により一時アヤメが激減しましたが、その後の保護活動を通じて植生が回復しつつあるのだそうです。とは言え期待していた「見渡す限りのアヤメ畑」というのとは大違いで、ちょっと拍子抜けでした。


ここでのメグミ先輩のお目当ては、実はアヤメではなくキバナノアツモリソウ(絶滅危惧IA類(CR))で、木道を辿りながら左右の草むらの中を探しています。いず女史と私も及ばずながらこれに加勢したのですが、残念ながら見つけることはできませんでした。


アヤメ平を通り抜けたら、櫛形山の西斜面を横断して起点へ戻ります。ところが等高線に沿った平坦な道が続くだけかと思いきや、思わぬ「急坂」もあってちょっとムッとしてしまいました。いや、これも予習不足だった自分が悪いのですが。

しかし、そうして高度を上げた後に出てきた平坦地に林立するカラマツとその足元を埋め尽くすシダが作る景観には、得も言われぬ不思議な美しさがありました。こうしてみると、ここに達するまでの間に通過したモミジ沢のカエデたちと言い全山に見られるカラマツと言い、この山は紅葉の季節に訪れてもすばらしいに違いありません。


北岳展望テラスから先はきれいに整備された平坦な道が続き、わずかの歩きで池ノ茶屋登山口に帰り着いて、穏やかに楽しめた櫛形山ハイキングを終了しました。
下界に降りて「まほらの湯」で入浴してさっぱりしたら、この日のメインイベントである「NEXT MOUNTAIN」訪問です。


2カ月ぶりに訪れた「NEXT MOUNTAIN」は相変わらずお洒落な店構えで、メグミ先輩もいず女史も(もちろん私も)欲しかったものをゲットできて大いに満足。お店の経営も順調ということなので一安心です。ここでしばらくショッピングを楽しんでからセキネくんと別れた我々は、さらに駅前にある「NICORI」の地域物産コーナーで散財した上で帰路につきました。



