秋田駒ヶ岳

日程:2024/07/15

概要:八合目小屋から男女岳の北面を回って阿弥陀池経由男岳に登頂。馬場ノ小路(ムーミン谷)を歩いて横岳に登り返し、焼森から八合目小屋へ下る。

⏿ PCやタブレットなど、より広角の画面で見ると、GPSログに基づく山行の軌跡がこの位置に表示されます。

山頂:男岳 1623m / 横岳 1583m

同行:ユキ

山行寸描

▲大焼砂から見た馬場ノ小路(ムーミン谷)。右奥は男岳、左は女岳。(2024/07/15撮影)
▲この日出会った花々。ムーミン谷の売りであるチングルマがほぼヒゲグルマになっていたのは残念だった。(2024/07/15撮影)

今年の4月に残雪期の秋田駒ヶ岳を登った際に同行してくれたトモミさんから推奨された高山植物帯(馬場ノ小路。通称「ムーミン谷」)を見に行こうと考えて、再びの秋田駒ヶ岳。今回はハイキング程度だから大丈夫だろうと考えて登山経験の乏しい相方ユキを伴ったのですが……。

登山前日は移動日兼観光の日とし、田沢湖一周バスで「たつこ像」や御座石神社を見て回ってから、この日の宿である乳頭温泉郷の蟹場温泉に移動しました。この宿の売りは屋外に50m離れたところにある露天の「唐子の湯」ですが、鬱蒼とした森の中にある熱々の露天風呂は鄙の雰囲気満点で、一応男女混浴ということにはなっていても、女性専用時間が1時間しかないことが申し訳なく思えてきます。夕食の方はさまざまな山の幸を並べたこの土地らしい献立で、メインのきりたんぽ鍋に秋田の銘酒の数々もおいしくいただいたら、翌日に備えて早々に就寝しました。

2024/07/15

△08:50 八合目小屋 → △09:55 阿弥陀池 → △10:20-35 男岳 → △11:50 駒池 → △12:15 大焼砂分岐 → △12:55 横岳 → △13:55 八合目小屋

朝風呂につかってから登山のかっこうに着替え、典型的な和旅館の朝食をいただいてからチェックアウト。宿からアルパこまくさまでバスに乗り、ここでごく短時間の乗継時間で八合目行きのバスに乗り換えて八合目小屋まで上がりました。

アルパこまくさから八合目まで上がるバスは臨時便が出ましたが、それでも登山者の数はさほど多くなく、男女岳の北面をぐるっと回り込む登山道はストレスなく歩くことができました。空模様は曇り時々晴れという感じで、たまに吹く涼風のおかげでほとんど汗をかくこともありません。

男岳が正面に見えるようになると、斜面にキスゲの花畑が広がりました。おお、これはなかなか見事ではありませんか。

緩やかな登りが木道歩きに変わるとわずかで、前方に阿弥陀池が現れました。池の手前から右の尾根を乗り越してただちにムーミン谷へ下ることもできるのですが、ここはユキにちょっと頑張ってもらうことにして、4月に登っていない男岳のピークを踏んでからムーミン谷に向かうというのが今回の計画です。

男岳と横岳を結ぶ尾根の上に出てから男岳に向かう道はところどころ岩がちの段差が初心者に厳しいものの、さほどの標高差もなく山頂を目指しています。右後ろを振り返ると男女岳とその右の阿弥陀池が徐々に角度を変えて見えるのも、この道の楽しいところです。

そして道の左側には女岳がでんと盛り上がっており、その足元に木道が走っているのを見下ろすこともできます。あの道がある谷筋が目指すムーミン谷です。

駒形神を祀る石祠と赤い鳥居が建つ男岳山頂で短時間の小休止。行動食と水を口にしてから尾根道の下りにかかります。こうして見下ろしてみると、この尾根が巨大なカルデラの外輪山であり、女岳が中央火口丘であることがはっきりわかります。

男岳から南西方向への下りはそこそこ急である上に部分的に滑りやすく、山慣れていない者は神経をすり減らされる道です。当初の計画ではこれを五百羅漢まで下ってから折り返してムーミン谷に向かうことにしていたのですが、この坂道の途中に地図には載っていない分岐が現れたときに、早く谷底まで降りてしまった方が楽だろうと安易に考えてそちらに下ったのが後から考えれば失敗でした。それまで以上の急降下に難渋してスピードが上がらず、ユキは何度か滑ってお尻にあざを作った上にちくちくするアザミの葉にも痛めつけられて、思わぬ苦行になってしまいました。こんなことなら多少遠回りでも五百羅漢まで下った方が良かった……と思いながら下っていると、この道を登ってきたジモティーらしき男性から「ここを下る人は初めて見た。大変だったでしょう」と同情される始末です。

それでもなんとか降りきったところにお花畑が広がっていれば報われるというものですが、残念ながらチングルマはほぼ全てヒゲグルマになってしまっており、なんのために苦労してここまでやって来たかわからない状態です。後で知ったところではどうやら6月末頃がチングルマの群生の見頃だったらしく、我々は完全に出遅れてしまっていたわけです。かろうじてエゾツツジのピンクが慰めてくれましたが、これは明らかに事前のリサーチ不足……誠に申し訳ない。

花の方はそんな具合に期待外れでしたが、火山ならではのダイナミックな地形は面白く、確かにここは花の季節に限らず歩く価値のある谷だと思いました。ことに駒池あたりの平らな地形は「馬場ノ小路」の名にふさわしく、時間にゆとりがあればこの谷の中に何時間でもとどまっていたくなります。

しかし我々は今日のうちに東京へ帰らなければならないため、ヒゲグルマの斜面を脳内でチングルマに変換しながら谷の出口へ向かいました。それにしてもここがいつからどういう由来で「ムーミン谷」と呼ばれるようになったのか不明ですが、その響きは愛らしいと思わなくもないものの、決してこの地に似合うネーミングとは思えませんでした。

すると、草原状の斜面が途切れる直前(小岳の東斜面)にチングルマらしき白い花が斜面に広がっている場所が現れました。おそらくこの辺りは残雪が最近まで残っていたために開花が最後になったのだろうと思いますが、おかげでかろうじて一矢報いた感じです。

ムーミン谷を抜けると火山性の砂礫の斜面となり、こちらにはこの地質にフィットするコマクサがちらほらと咲いていました。

砂礫の斜面をトラバースして尾根道に合流したら、折り返して横岳山頂を目指します。男岳から下った道がカルデラの北側の外輪山であったのに対し、こちらの尾根(横長根)は南側の外輪山です。

横岳までの登り返しは標高差が200m以上もあるために大変かなと思っていたところ、意外に歩きやすくさほどの苦労を感じずになんの特徴もない横岳のピークに登り着くことができ、そこから裸地の小ピークである焼森を経て八合目までぴったり1時間でした。しかもちょうど下界へ向かうバスが到着したところだったので、直ちにこのバスに乗ってアルパこまくさまで下り、入浴してさっぱりしてから田沢湖駅前に移動して、予約してある新幹線の時刻までの1時間を駅前の食堂での打上げに当てました。ただし、労而無功に終わった今回の山旅を振り返って私の方が相方に対し平身低頭だったことは言うまでもありません。