笹子川滝子沢左俣

Rec. 1012沢登り

日程:2026/07/30

概要:滝子山の南面中腹を横断する林道の途中にある権現橋に車を駐め、しばらく滝子沢左岸の林道を登って道が尽きるあたりから滝子沢に入渓。滝子山の山頂直下に詰め上がり、山頂を踏んでから寂惝尾根を下って権現橋に戻る。

◎PCやタブレットなど、より広角の画面で見ると、GPSログに基づく山行の軌跡がこの位置に表示されます。

◎GPSログのダウンロードは「ヤマレコ」から(要ログイン)。

山頂:滝子山 1620m

同行:セキネくん

山行寸描

▲30m多段滝。フリクションもよく、楽しく登れる。(2026/07/30撮影)
▲ナメ滝一条クラック。勇気核心の滝と言ってもいいかもしれない。(2026/07/30撮影)

◎本稿での地名の同定は、主に『東京周辺の沢』(白山書房 2000年)の記述を参照しています。

久しぶりのセキネくんとの山行は、今年は沢登りに力を入れたいという彼の希望に沿ってお互いの住まいの中間に位置する滝子山に突き上げる滝子沢をセレクトしました。この近くでは西隣のズミ沢もよく登られていますが、あちらの源流は大谷ヶ丸であるのに対し、この滝子沢は正真正銘、滝子山の山頂直下から流れ下る沢です。なお、地形図を見ると「滝子川」と書いてありますが、Google先生に確認したところ「行政的には滝子川、登山の文脈では滝子沢で、どちらでも間違いではないのだ」ということなので、本稿では「滝子沢」と表記しています。

2026/07/30

△09:20 権現橋 → △11:05 ナメ滝一条クラック → △12:45-13:15 滝子山 → △15:05 権現橋

笹子駅でセキネくんと合流し、彼の車で西側(大鹿川側)から林道に入り滝子山の中腹を横断して滝子沢に架かる権現橋を目指します。公共交通機関を利用する場合は滝子沢が笹子川に合流するあたりから沢沿いの道を延々と登っていくことになりますが、このように権現橋までショートカットできれば標高差260mほどをパスできる計算です。

林道は荒れ模様のダートで、ときどき車を降りて道の上の石や枯れ枝を取り除かなければなりませんでしたが、それでも無事に権現橋に辿り着くことができました。うまい具合に橋の西のたもとには格好の駐車スペースもあり、ここで沢装備一式を身につけて遡行を開始しました。

……と言ってもしばらくは沢の右(左岸)にあるコンクリートで丁寧に作られた仕事道を登って、さらに130mほど標高を稼ぎます。やがてコンクリ道が尽きたところで涸れ沢になっている滝子沢に入り、最後の堰堤を左から越えてしばらくはガラガラの沢筋を登り続けました。

標高1000mあたりから水が表に現れて沢らしくなり、悠然と岩の上に休んでいる美しいまだらの蛇に挨拶をしながらしばらく遡行を続けると、最初の滝らしい滝にぶつかりました。高さは3mほどでホールドもしっかりしていますが、ここでフォールして尾骨を折ったという気の毒な記録を見たことがあるのでくれぐれも慎重に。

最初の滝を越えると、次々に滝が現れて沢登りらしくなってきます。今回は二人ともラバーソールの沢靴を履いていますが、ところどころヌメっている箇所もなくはないものの、おおむね良好なフリクションを得られて気分よく登ることができました。

滝子沢の最初のポイントとなる滝は、ケルンのある奥の二俣を右に入った先にあるこの30m多段滝です。つるっとした岩がおおまかに連なるこの滝は、斜度も緩くてフレンドリーな印象を与えてくれています。

そこで各自フリーで取り付いたところ、途中でセキネくんが足を停めて何かを撮影しています。何?と思いつつそこまで登ると、そこにいたのは面構えもたくましい大きなカエルでした。このカエルの仲間たちには後でたびたび出会うことになるのですが、それより気になるのは、もしや先ほど見かけたまだら蛇はこのカエルの一族を餌にしているのではないかということです。

多段滝の上にも小滝が連なります。いずれも難しくはないものの、かと言ってすたすた登れるというものでもなく、細かく神経を使いながらの遡行が続きます。

大きな3段滝は一見威圧的ですが、左上→右上→左上と電光型の軌跡を描いて登れば容易です。

3段滝の上にも規模の小さい滝が続きますが、その最後に出てくる小滝で私がハマりかけてしまいました。水流は滝の左側を落ちていて、先行するセキネくんはそちらを律儀に登っていたのですが、後ろからこれを見た私は右の落ち葉の斜面から簡単にかわせるのでは?と安易に考えてそちらに取り付いたところ、落ち葉の下は土ではなくスラブで、踏み込んだ足がつるつると滑ってしまって身体を引き上げられません。それでも右端の側壁を手がかりにしてどうにかこの滝を乗り越えたものの、思わぬ時間を使ってしまいました。お恥ずかしい……。

いよいよ滝子沢のハイライトである20mナメ滝一条クラックに到着しました。事前の情報のとおり傾斜は寝ているものの、出だしから数メートル登ったあたりの外傾したフットホールドに足を乗せる箇所がいかにも怖そう。ここはロープを出してセキネくんがリードしましたが、リーチのある彼でもそのポイントでは手がかりを得られないためにラバーソールのフリクションを信じて乗り込まなければならず、彼にしてはかなり慎重な登り方になりました。しかし、そのポイントに立てれば左手側にガバを得られ、その先には残置ピンやハーケン、カムを使える場所も出てきます。

後続してみると確かに岩のフリクションは良好で、勇気を持って足を出していけば登れる滝ではありましたが、自分はここをリードしたくはない感じ。ネット上の記録には「簡単だったのでランナーもとらなかった」というものがありましたが、技量が十分ではないパーティーがそれを鵜呑みにしてこの沢に入ったら、この滝で痛い目に会うのは必定だと思われます。なお、この滝のところどころにはなぜかカエルが貼り付いていて、セキネくんによってはたき落とされたカエルたちがビレイしている私の目の前に滑り落ちてきたり、私自身も一匹を下界へと送り出したりしました(「あの世」に送ってはいません)。

ナメ滝一条クラックの先には黒光りする8mハング滝があって、これもまた滝子沢の登攀的なポイントになっており、事前の打合せでセキネくんはここも登れれば登りたいと言っていたのですが、先ほどのナメ滝一条クラックで彼も私もお腹いっぱい。一応オブザベーションはしてみたものの、ここは巻くことにしました。

この滝を巻く踏み跡は右にも左にもついていますが、どうやら我々がとった左(右岸)の方がベターだったようです。その巻き道に入るためにハング滝の直下に立つと、降り注ぐ水流が天然のシャワーになって火照った身体を冷やしてくれました。つまり、この滝に取り付いていたらどっかぶりのシャワークライミングになっていたということです。

ハング滝の上にも小滝が出てきますが、もはやロープを使う場所はなく、沢自体も源流部の様相を呈してきています。

滝場が終わった後に三俣ないし四俣になった場所があって、他のパーティーの記録を見るとやや左寄りにコースをとり山頂の西側の鞍部に出ているものが散見されたのですが、我々はたぶん最も素直だと思われる沢筋を詰めていき、最後は藪漕ぎなしで三角点峰のわずかに東側に詰め上がりました。

誰もいない静かな滝子山の山頂に到着。富士山が全貌を見せてくれています。

山頂で沢装備を解いて腰を下ろし、試みに持参したU.L.弁当のフルーツミルクグラノーラ(一袋で305kcal)をシェア。30分ほどのんびり休憩した後、寂惝尾根を下って起点へ戻りました。

この滝子沢は、出だしこそガレガレで面白みがありませんが、滝場が始まると次々に個性のある滝が連なって現れ、飽きることがない良渓でした。比較的短時間の行程ながら、ナメ滝一条クラックやハング滝といったそれなりの技量を求められる滝もあり、最後は富士山の展望が待っている山頂の直下に抜けられるというのも美点です。ハング滝を巻いてしまったのは少々心残りですが、それでも充実した半日でした。