広河原沢左俣見晴らしルンゼ

日程:2025/01/11

概要:広河原沢左俣の見晴らしルンゼをワンデイで。下山は御小屋尾根から。

⏿ PCやタブレットなど、より広角の画面で見ると、GPSログに基づく山行の軌跡がこの位置に表示されます。

山頂:---

同行:ミホさん / クス氏

山行寸描

▲抜けるような青空と純白の雪とのコントラスト。4日前とは大違い。(2025/01/11撮影)
▲二の滝。思わぬところに懸垂下降用の支点があって助かった。(2025/01/11撮影)

1月7日に訪れたばかりの見晴らしルンゼに、今季がアイス2シーズン目のミホさんとクス氏を引率して再び訪問しました。7日は諸般の条件を勘案して急遽転進したものでしたが、今回はもともとその前から決まっていた予定であり、そしてミホさんとクス氏は見晴らしルンゼ初体験。この日の目標は、アイスクライミングの技量向上ということよりも、今後二人が自分たちで見晴らしルンゼを楽しめるようにこの場所の地理的な概念と安全確保上のポイントを会得してもらうことです。

2025/01/11

△08:45 舟山十字路 → △09:55 二俣 → △10:15-35 左俣F1手前 → △11:00 見晴らしルンゼ出合 → △11:50-15:50 見晴らしルンゼ氷瀑群 → △15:55-16:10 御小屋尾根 → △16:40 御小屋山 → △17:30 舟山十字路

本当は広河原沢二俣にテント泊して2日かけて広河原沢をあちらこちらと回れば楽しいのですが、メンバーの都合で今回は日帰り。よっていつものように午前6時半に京王線高尾山口駅前で合流して、クス氏の運転で中央道をひた走ります。

抜けるような青空の下、やはり八ヶ岳の上にだけは雲がかかっていましたが、雲の色にはいつもの邪悪な暗さはなく、むしろ早朝の日光を浴びて輝く赤岳の山肌の白銀が目立ちます。やがて到着した舟山十字路は予想どおり満車状態で、林道のずいぶん手前に駐めている車が多数見受けられましたが、幸いクス号は車体が小さいので隙間的に空いたスペースに置くことができました。

正面にこれまた真っ白に輝く阿弥陀岳を見上げて堰堤前を左岸に渡り、やがて到着した二俣にはテントが3張り。今日は三連休の初日ですから、これからさらにテントが増えるのかもしれません。

左俣F1に着くと、先行していた4人パーティーが装備を身につけているところでした。行き先を確認すると同じ見晴らしルンゼに向かうということでしたが、「登るところはたくさんありますから」と有効的雰囲気を維持。我々もここで身繕いをして、彼らの後を追うようにして見晴らしルンゼに向かいます。

見晴らしルンゼに到着したところで、ミホさんは「八ヶ岳ブルー」とも称される深い空の青と頭上の枝を覆う雪の白とのコントラストの美しさに歓声を上げましたが、歓声を上げたのは男二人も同様です。ことに4日前の風雪まじりの悪天候の中ここを登った私は、周囲の景観のあまりの違いに「来て良かった……」と悦に入っていました。

それはさておき毎度おなじみの模式図で説明すると、我々の前に見晴らしルンゼに来ていたのはF1で会った四人組を含めて4パーティーあり、男性二人組が二の滝登攀中、男女二人組が二三と四五の分岐で休憩中。四人組は四の滝の前にリュックサックを置いて待機中で、どうやらその前に人数不明のパーティーが四の滝を登っている様子でした。我々も男女二人組の近くにリュックサックをデポして、ここがこんなに混むとは珍しいですね的な会話を交わしましたが、さてどうするかと見回すとちょうど二の滝を登っていた二人組が懸垂下降で降り始めているところだったので、そちらに向かうことにしました。

ここはクス氏にリードを委ねることとし、ロープはクス氏を起点にミホさん・私をそれぞれ繋いで、ビレイはミホさんにしてもらいます。先行していた二人組が懸垂下降を終えたところでクス氏テイクオフ。下段の3mほどの滝をクス氏は難なく越えて緩斜面を登ってから、上段の滝にスクリュー2本で支点を構築して続くミホさんと私を迎え入れました……が、最後に登り着いた私の採点は「これは30点ですなぁ」、これを聞いたクス氏はがっくり。クライミング自体には何の問題もなく、また出来上がった確保支点にも問題はなかったのですが、そこに至る支点構築に時間がかかりすぎ(これではビレイヤーは凍死してしまいます!)、さらに時間差で二人を同時に引き上げる動作にも慣れておらず四苦八苦。前者は分厚いグローブでのギアの取り回しがうまくいかなかったそうなので、練習で慣れるかグローブを変えるしかありませんが、後者は確保支点と自分の立ち位置との距離をもう少し開ければずいぶんやりやすさが違ったはずです。そういったあたりをクス氏に伝えてから、さてと上段の滝を見上げました。

これまでずっと、この上段の滝を登った後に懸垂下降するためには落ち口右岸の短いながらも際どいトラバースをこなして太い灌木を使うかアバラコフを利用するしかないと思い込んでいたため、今日に関してはそうしたリスクをとりたくない私は上段の滝を登ることはせず、その足元で支点構築の練習やアバラコフ作成の実演でもやってから下ろうと思っていたのですが、先に二の滝を登っていた二人組の男性が降りてきたときに上段の滝の上の懸垂支点の状況を聞いてみたところ、雪の中から偶然見つかった残置スリングを使用することができたという耳寄りな情報を得ることができました(ありがとうございます)。それならばと予定を変更して上段の滝も登ることとし、ただし支点の状況を目視しているわけではないので念のためここは私がリードして、教えられたとおりのしっかりした残置スリングを見つけてここに確保支点を設け、ミホさん・クス氏の順に二人を引き上げました。

それにしても、こんなところに支点が隠れていたとは今まで知りませんでした。スリングだけが表に出ていてそれが何に固定されているのかを確認することはできませんでしたが、先の二人組はここにカラビナを掛けてトップロープでの練習もしていたということだったので強度は問題ないはず。我々もありがたくこれを活用させてもらって、ここから懸垂下降2回で下段の滝の下に降りました。

リュックサックをデポした場所に戻って昼食休憩。二の滝の中は日が差し込まないので動いていないと寒さを感じましたが、こちらはお日様がぽかぽかでいくらでも長居したくなります。しかし気がつけばこの時点で14時を回っており、あまりのんびりしてはいられません。

短時間の休憩を終え、最初に会った四人組が四の滝を降りてくるところを横目に見ながら我々は五の滝へ。ここを再びリードしたクス氏は、やはりグローブの厚みのためにクリップに手間取る場面もありはしたもののそれでもそつなく落ち口を越えていき、その後の支点構築(立木にスリングをラウンドターン)も後続の引き上げも二の滝のときに比べればはるかにスムーズに行ってくれました。

確保支点に三人が揃ったところでこの日の登攀は終了です。ここからは御小屋尾根に上がることにしているのですが、実は私はこれまで見晴らしルンゼから御小屋尾根経由で下山したことがなく、このためどれくらい登ればいいのか見当がついていませんでした。ところが、そこに残されている雪の上の踏み跡を頼りに五の沢筋をわずかに登って左(右岸)の尾根に乗り上がると、そこからほんの少しの登りで傾斜が緩み、その先に標識が見えてびっくりしてしまいました。この標識は御小屋尾根の登山道上に立つ「不動清水分岐上標高2280m」で、ロープを解いた場所からここまでたったの5分でした。

登山道に出たところでヘルメット以外の登攀装備をすべてしまい、ストックとチェーンスパイクにモノを言わせてどんどん下ります。ごくわずかのアップダウンはあるもの歩きやすい登山道の途中からは、夕映えの中で徐々にシルエットになっていく南アルプス北部の山々(上の写真の中央に左から北岳・甲斐駒ヶ岳・仙丈ヶ岳)を眺めることもできました。

御小屋山は別名「御柱山」と言い、諏訪大社上社の御柱(社殿四隅の大柱)はここにある社有林から伐り出されるのだそう。地図を見ても御小屋山の西麓に「御小屋諏訪明神奥社」があってこの山と諏訪大社との関係を窺わせますが、かたや舟山十字路へ下る道の途中には由緒不明な虎尾神社があって、興味をそそられて立ち寄ってみたところ社殿はなく、西岳を向こうに見る位置に複数の石碑が立ち並んでいるだけでした。そうした寄り道をしつつも舟山十字路に着いたのはヘッドランプが必要になるかどうかのぎりぎりのタイミングで、登攀装備をしまった標識「不動清水分岐上標高2280m」からここまで1時間20分でした。

さすがに腹が減ったぜと高速道路に乗る前に立ち寄ったのは、北杜市小淵沢町の「お食事処 やまよし」です。

地元でも人気の店らしくほぼ満席の店内にタイミングよく入ることができて、注文したのは「からあげ定食(6個)」。なるほど人気があるのも道理で、安く・おいしく・ボリューミーの三拍子が揃い、これはリピート確定です。ただし私にとってはボリューミーの度が過ぎていたので、次にこの店に来たときには慎ましく「からあげ定食(4個)」にしておこうと思います。

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