四十八瀬川小草平ノ沢
日程:2002/04/06
概要:丹沢の小草平ノ沢を遡行し、堀山の家から大倉尾根を下降。
山頂:---
同行:---
山行寸描
2002/04/06
△10:30 大倉 → △11:50-12:10 二俣 → △14:20-50 堀山の家 → △16:00 大倉
天気予報でこの土曜日は晴天かつ気温も高いことを確認し、この日を今年の「草鞋初め」(といっても草鞋は使いませんが)としました。半年ぶりの沢登りでしかも単独での沢は初めてなので沢登り初体験者を連れて行くのに最適
とモノの本に書かれている小草平ノ沢を選びましたが、黒澤ガイドからは以前「小草平ノ沢が初心者向きなんてとんでもない。けっこう手応えありますよ」と教えられていたので、それなりに気を引き締めて大倉のバス停に降り立ちました。土の匂いがする明るい田園風景から雑木林の中の小径を抜けて、西山林道をハイカー数名を追い抜きながらうねうねと進んでいくと道が4方向に分岐する場所に出ました。ここで以前勘七ノ沢を遡行したときに来たときの記憶を誤って覚えていたためにそこから下る道に入ってしまい登山訓練所の下をうろうろしてしまいましたが、地図をよく見たら分岐を上にとらなければならなかったことが判明。20分のロスで見覚えのある入渓点に到着しました。
既にお昼になっていることもあって期待通り気温が高く、上衣は冬用のクロロファイバーのアンダーウェアの上にゴアのヤッケを着ただけで十分。ハーネスをつけ、久しぶりの沢靴に足を入れて、おもむろに沢に入りました。堰堤を左から越えて進むと二俣になり、左を向くと勘七ノ沢F1が見えていて以前登ったときに比べて水量が多そうです。一方、右の沢が小草平ノ沢で、こちらはすぐに登山道が横断しており、そこを過ぎると溝渠のようになってすぐに突き当たりの右から5mの滝が水を落としている場所に出ました。壁は比較的立ってはいますが、ホールドは豊富。ただしもちろん落ちるわけにはいかないので、慎重に右壁を登りました。
すぐに現れたのが3段12mの滝で、最初の段を下から眺めたところあのホールドをとれれば後は簡単だろうというポイントが見つかったのですが、そこまでつなぐのがちょっと難しく感じます。一応ムーブを頭に描いて左壁から水流に向かって取り付いては見たものの、濡れて外傾したホールドの感覚にまだ身体が慣れておらず予想外に悪く感じまてそのままセミになりそうになりましたが、下から見えていなかった遠いホールドを2手つないで身体の位置を上げるとポイントのホールドに手が届き、這い上がることができました。「なんだかかっこわるいぞ!」と自分にツッコミを入れながらも続く中段は問題なく越え、上段は左から巻きました。
そこから先は倒木が折り重なるように沢を埋めている凄絶な光景で、倒木の間をくぐるように先へ進みます。スラブ状の滝を右から巻いて明るいゴルジュ帯に入り、最初の3m(?)の滝はシャワーを浴びながら水流の中を2歩上がって左壁のホールドをつなぎました。次に出てきた3条の滝は左側の水流がほとんど枯れて2条の滝と化していましたが、その一番右をやはり飛沫を浴びながら登るのが楽しいところ。この辺りでは感覚も戻ってきたようで、ずいぶんスピードも上がってきました。
いくつかの小滝をそのまま越えたり右から巻いたりしながら遡行を続け、4mのチョックストーン滝は左の乾いた壁を登って落ち口へトラバースしました。トラバースにかかるところに残置スリングが垂れていましたが、濡れていなければ特に危ないことはありません。ところで写真を見てもわかる通り、水面や岩の上にはびっしり枯葉が敷き詰められたようになっているところが多く、注意していないと思わぬところで踏み抜き膝までを濡らすことになります。ホールドも湿った枯葉を取り除きながら探らなければならないところが何カ所かありましたが、いずれ大雨が降ってこの冬の名残りを洗い流してほしいものです。
この後再びゴルジュになって、その先の二俣の左にいよいよ最後の7m滝が見えてきました。ここが小草平ノ沢で一番難しいところとされており、近くに寄って見上げてみると水流の右上の方にスリングが2本垂れていてそこが核心部だとわかります。その直下までは特に困難なく登れそうで、しかもいざとなったらそこから右のカンテへ逃げられそうだと当たりを付けて、おもむろに壁に取り付きました。実際に核心部の下まで登ってみてホールドを探ると、上のホールドがとれることはとれるのですが濡れている上にかかりが少し浅く、またこれまでの滝に比べて壁が立っていて圧迫感があります。スリングをぶら下げたハーケンの利きを確かめると一応利いていそうなので、垂れているスリングに保険をかけて突っ込もうかとも考えましたが、足を伸ばして探ってみても立ちこめそうなフットホールドが見つかりません。しばらく逡巡した後、結局右のカンテへ空中に身を乗り出すようにして逃げてしまいました。
ナメ状の流れが伏流に変わり、植林地を登るようになったところでいきなり足下に動物の白骨死体が現れて仰天。背骨がまるまる残っていて、その大きさからすると鹿のようです。そのうち上の登山道を歩いている登山者も見えるようになって、柔らかい土の急坂をあえぎながら登り、とうとう尾根の上に出ました。入渓してからここまで、誰にも会うことのない静かな遡行でした。
出たところは堀山の家の直下で、そのまま堀山の家のベンチの近くに腰を下ろして遅い昼食としてから、沢道具は全て片付けて大倉尾根を下りました。尾根道の上の方ではマメザクラが満開で、霞んではいましたが秦野盆地もよく眺められました。